初心者のためのイタリアワインの選び方 生産地編 格式と自由が混在するトスカーナ

伝統や格式を重んじる一方で、それらにとらわれる事なく美味しさを追求する勢力も。トスカーナのワイン3選

2000種あるというイタリアのぶどう

イタリアワインの特徴の一つはその多様性でしょう。古代ギリシャ人が「エノトリア・テルス(ワインの大地)」と名付けたように、もともとワイン造りに適しているイタリアの大地ですが、この多様性が生まれたのにはいくつか理由がありました。

  • 1861年にイタリア王国として一つの国に統一されるまで、各地に独立した小都市国家があったこと。それぞれに歴史的背景や異なる文化を持ち、それぞれの地で多様なブドウ品種が生育され、独自の発展を遂げた。
  • 多彩なテロワールがあること。北部国境にはアルプス山脈、半島を南北に走るアペニン山脈。半島を囲むティレニア海、アドリア海、イオニア海。そこに注ぐポー川やアルノ川、さらにアルプス山麓の湖水地方などの水源。パダーナ平野を筆頭とする平野部の農業地帯。
  • 地産地消が根付いているため、マイナーな品種であってもその地で消費され、その地のものと組み合わせて(マリアージュして)さらに個性に磨きがかかることに。

イタリアの地図(左は州と主要都市、右はNASAによる航空写真ー山脈と平野、海がよくわかる)



トスカーナの代表ワイン生産地

その中でも特に良質のワインを生み出すのがトスカーナ州。トスカーナ州は、イタリア文化の重要な中心地で、ルネサンスが花開いた芸術の都フィレンツェを含む7つの世界遺産に加え、鮮やかな緑に恵まれた美しい丘陵地帯を持つ地域です。そのうち代表的な3つの生産地をご紹介します。

世界遺産サン・ジミニャーノ歴史地区近くのぶどう畑

キャンティ地区 キャンティ・クラシコ

トスカーナのキャンティ地区で造られるワインが「キャンティ(Chianti)」を名乗ることができるDOCGです。キャンティ地区は大変広く作付け面積240,000ヘクタール(1ヘクタールは東京ドーム0.21個分)とも言われています。

赤ワインの生産が主で、赤いフルーツを香りを感じるフルーティでしっかりした酸味のあるぶどう品種サンジョヴェーゼを主体としています。

ところが、キャンティ人気による生産の広がりと共に起こった品質の低下を危惧した伝統的なキャンティの生産者たちが、品質の維持と伝統を守るために作ったのがキャンティ・クラシコ協会で、フィレンツェからシエナに渡る古くからの生産地のみ「キャンティ・クラシコ(Chianti Classico)」DOCGを名乗ることになりました。シンボルである黒い雄鶏(Gallo Nero)が目印で、キャンティよりもより多くのサンジョヴェーゼ(75% vs 80%)が使われ、長い熟成期間(4ヶ月 vs 11ヶ月)が定められています。

目印の雄鶏マーク

どちらのワインもリゼルバ(Reserva)と言ってさらに熟成期間の長いクラスがありますが、さらに2014年に「キャンティ・クラシコ・グラン・セレッツィオーネ(Chianti Classico Gran Selezione)」というよりぶどうと熟成期間にこだわったクラスができ、余計な混乱を招くと不評のようです。

ボルゲリ地区 スーパータスカン

トスカーナ州は丘陵地帯だけでなくティレニア海にも面していて、斜塔で有名なピサの町から60キロメートルほど南下した所にボルゲリ地区があります。このボルゲリ地区で生まれたのが「スーパータスカン(Supertuscan)」で、イタリアのワイン史においても大変重要な出来事となりました。

というのは、イタリアのワイン造りは法律で厳しく規定されているので閉鎖的とも言えるのですが、ワイン法の伝統や格式にとらわれることなく自由に美味しさを追求したのがスーパータスカンでした。

ボルゲリに土地を所有していたマリオ・インチーザ侯爵は、ボルドーワイン好きでしたが、第二次世界大戦でフランスワインが輸入されなくなり、自分たちの畑でボルドー風ワインを造ることにしました。 イタリア土着の品種ではなくフランスのカベルネ・ソーヴィニヨンをメインに用いてワインを造り成功を収めたのが、スーパータスカンの始まりとなる日本でも有名な「サッシカイア」で、後日DOCに昇格します。

トスカーナから端を発した「国際品種」「品質重視」のワイン造りはイタリア全土に広がり、イタリア全体の品質の向上にも繋がりました。

イタリアワインに大きなインパクトを与えたスーパータスカンのスター達(左から Tignanello, Solaia, Sassicaia, Masseto, Ornellaia)

モンタルチーノ地区 ブルネロ・ディ・モンタルチーノ

「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(Brunello di Montalcino)」とは、シエナ県にあるモンタルチーノ地区でつくられるワインです。サンジョヴェーゼの変異種ブルネッロ(サンジョベーゼグロッソ)を100%使用した力強い味わいが特徴のDOCGです。

ピエモンテ州の「バローロ」「バルバレスコ」とともにイタリア3大ワインの一つとされ、その優雅な味わいからイタリアワインの女王と呼ばれています。熟成期間は最低でも5年、その内24ヵ月は樽熟成が義務づけれられており、長い熟成期間の間に、力強さの中にエレガントな柔らかさが生まれてきます。

熟成期間を短くして市場に出ることが認められているのが「ロッソ・ディ・モンタルチーノ(Rosso di Montalcino)」で、収穫年の翌年9月以降には販売可能となります。

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノワイン生産者協会HPより



初心者のためのイタリアワインの選び方は、格付編生産地編(格式と自由が混在するトスカーナ)生産地編(バローロだけじゃないピエモンテ)生産地編(泡も白も赤もグラッパまであるヴェネト)泡編がありますので、そちらも合わせてご覧ください。

 

ライター
ITALIAMO編集部

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