イタリアでおいしい牛肉を食べるためには、まずどんなイタリアのブランド牛が存在し、イタリアの肉屋でカットされるそれぞれの牛肉の部位や、その料理法を把握する必要があると思いませんか?イタリアの牛肉事情をご紹介しましょう。
レストランのメニュー選びに戸惑わずに楽しめるようになったら、その土地の食材を自分の好みに調理することができるようになったら、よりイタリアをエンジョイできるのではないでしょうか。イタリアの肉屋やスーパーで調達するための、牛肉の各部位を使用したメニューをご紹介しましょう。
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それぞれの部位を使ったイタリアンメニュー
イタリアの牛のブランドと部位が分かったところで、それら各部位が、イタリアではどんな方法で調理されているのか、またレストランではどうメニュー表記されているのか、気になります。それぞれの部位の定番メニューを探ってみましょう。
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15. リブロース Costata / Entrecote / Lombata / Lombo
骨を挟んでフィレの反対側にあるこの部位は、ステーキ『Costata di manzo alla griglia』が主流です。そこに、はちみつのソースやアンチョビのソース、カッペリなどが添えられることもあります。他、ミラノ郷土料理、ミラノ風カツレツ『Cotoletta alla milanese』には、骨付きのこの部位が使用されます。
『Cotoletta alla milanese』 Photo by lacucinaitaliana.it
16. サーロイン Controfiletto / Roastbeef / Lombata / Lombo
リブロースの隣に位置するこの部位は、ローストビーフの別名を持つイタリアでも人気の部位です。名前の通りローストビーフで使用することはもちろんですが、グリルしスライスされた『Tagliata di manzo』でシンプルに食べることが多く、他、焼き目をつけてベーコンとブロードで煮込む『Arrosto di controfiletto di vitello』などがあります。フィレンツェ名物『ビステッカ アッラ フィオレンティーナ』のTボーンステーキは、このサーロインと17の部位、ヒレの2種類が楽しめる一皿です。
『Tagliata di controfiletto』 Photo by chefincamicia.com
17. ヒレ Filetto
柔らかいヒレはイタリアでも高級部位とされています。ヒレの中でも厚い部分を、シャトーブリアン"chateaubriand"、中心部は、トルネードス" tournedos"と分割され、中心部トルネードスは、メダル状にカットされ、メダリオーネ"Medaglione"と呼ばれたりします。このメダリオーネは、ラルドやベーコンを側面に巻いて、ステーキ、オーブン焼きが主流で、バルサミコソースやグリーンペッパーソースなどソースでバリエーションを増やしたりします。また生のままミンチにして、タルタル"Tartare"としても食されます。
『Tartare di manzo』 Photo by labarcadinoce.it
18. 中バラ Biancostato di pancia / Spuntatura / Spezzato
柔らかく旨味と脂質のあるこの部位は、骨付き骨なしとあります。骨付きでは、茹で肉『Bollito』が一般的ですが、焼き目をつけて煮込む『Arrosto』やオーブン焼き『in foro』、骨なしはサイコロ状にカットして煮込む『Spezzatino』などにも使用されます。
『Biancostato arrotolato in forno』 Photo by lacucinaitaliana.it
19. 外バラ pancia / Pancetta / Falda / Pendore
脂質が多く柔らかいこの部位は、焼き目をつけて煮込む『Arrosto』が一般的で、長時間の煮込み『Brasato』や『Stufato』、サイコロ状にカットして煮込む『Spezzatino』、キノコなどを詰め物にした『Pancia di vitello ripiena ai funghi』、ミンチにして丸めた肉団子『Polpette』、ハンバーグ『hamburger』などにも使用されます。
『Polpette di carne』 Photo by salepepe.it
20. 中外バラ Scalfo / Spuntatura di lombo / Finta cartella
肉屋でもなかなか見かけない、あまり人気のない低価格な部位です。サイコロ状にカットして煮込む『Spezzatino』やミンチにされ、団子状の『Polpette』、ハンバーグ『hamburger』に使用されます。
『Hamburger di manzo』 Photo by blog.giallozafferano.it
21. ランプ Scamone / Pezza / Groppa
16の部位、サーロインの隣に位置する大きな筋肉質の部位です。日本でもお馴染みのランプステーキ『Bistecca』やローストビーフ『Roastbeef』が主流ですが、肉を叩いて薄くし、肉巻き『Involtini』にも利用されます。
『Involtini di manzo con speck e formaggio』 Photo by agrodolce.it
22. イチボ Codone
21の部位、ランプの横に位置する、ぶ厚い脂身を含むこの部位は、ステーキ『Bistecca』や炭火焼き『alla griglia』はもちろん、長時間の煮込み『Brasato』や『Stufato』にも使用されます。またブラジル名ですが『Picanha』とメニューにあがることがあります。
『Picanha alla griglia』 Photo by braciamiancora.com
23. 外モモ Fetta di mezzo / Sottofesa / Fesa esterna
日本でも安価な部位とされる外モモは、イタリアでも同じです。そのため、ローストビーフやブレサオラに加工されて販売されることの多い部位です。炭火焼き『Grigliata』などの短時間調理で、レアに近い状態で食されます。
『Involtini di bresaola e philadelphia』 Photo by blog.giallozafferano.it
24. シキンボ Magatello / Girello / Lacerto / Coscia rotonda
脂質の少ないこの部位は、野菜と煮込んでスライスし、シーチキンとマヨネーズのソースが添えられるピエモンテ州郷土料理『Vitello tonnato』や、焼き目をつけてじっくりオーブンや鍋で仕上げる『Arrosto』、スライスし小麦粉をまぶしてソテーにし、ワインやブロードで短時間煮て仕上げる『Scaloppine di magatello』が代表的なメニューです。
『Vitello tonnato』 Photo by cibovagare.it
25. トモサンカク Spinacino / Tasca / Tri tip
脂質の少ないこの部位は、塊に切り込みを入れ袋状にし、肉や野菜を詰めて、焼き目をつけ煮込む『Spinacino di vitello ripieno』が一般的で、詰め物でたくさんのバリエーションがあります。
『Spinacino di vitello ripieno』 Photo by soniaperonaci.it
26. シンタマ Noce /Rosa / Gommosa di coscia / Boccia grande
貴重部位とされるシンタマは、塊でもスライスでも使用されます。野菜とビールで煮込み、煮込み汁と生クリームで作るソースを添えた『Noce di manzo alla birra e panna』、ブロードと野菜で長時間煮込む『Noce di vitello in casseruola』など、煮込み系が多い部位です。
『Noce di vitello in casseruola』 Photo by lacucinaitaliana.it
27. 内モモ Rosa / Scannello / Fesa interna
柔らかなこの部位は、煮たり焼いたり、さまざまな調理に活躍しています。ステーキ『Bistecca』、カツレツ『Cotoletta』、小麦粉をまぶしてソテーにする『Scaloppine』、ローストビーフ『Roast beef』、煮込みの『Stufato』や『Spezzatino』など、イタリアでもポピュラーな部位です。
『Spezzatino di vitello alla birra』 Photo by blog.giallozafferano.it
28. スネ Geretto posteriore / Ossobuco
スジ、骨髄を多く含むこの部位は、輪切りのもの、骨を抜いたものとあり、"Stinco"と表記される場合があります。煮込みに向いているので、赤ワイン煮『Ossobuco in salsa di vino rosso』、茹で肉『Bollito』や『Brasati』や『Arrosto』、骨ごと煮込んで出汁ブロード『Brodo』が一般的な調理法です。ミラノ郷土料理『Ossobuco alla Milanese』は、この部位の輪切りを煮込んだ一皿です。またハンガリー伝統料理ですが、パプリカパウダーの入ったトマト煮『Gulash』もレストランメニューで見かけます。
『Ossobuco in salsa di vino rosso』 Photo by manjoo.it
29. スネ Pesce / Piccione / Muscolo posteriore / Stinco
牛の後ろ足のふくらはぎで、筋肉質なこの部位も、"Stinco"と表記される場合があり、煮込み専門です。『Pesce di mano brasato』、『Stracotto di manzo al barolo』など、とにかく長時間煮込む料理に限ります。ペッシェ"Pesce"は、単独で"魚"という意味を持つため注意が必要です。牛肉の場合には区別するため、"牛肉の"の意で、ディ マンツォ"di manzo"や、ディ ヴィテッロ"di vitello"が部位名ペッシェ"Pesce"の後ろに つきます。
『Stracotto di manzo al barolo』 Photo by casaserra.it
30. テール Coda
28.のスネ同様、輪切りで骨付きの長時間煮込む部位です。野菜とトマト、松の実とレーズンが入った白ワインの煮込み、ローマ伝統料理『Coda alla vaccinara』や、煮込んで骨を取り除いたものを、詰め物にした『Ravioli di coda di vitello』、トマトスープのミネストローネ『Minestra di coda di manzo』が一般的です。
『Ravioli di coda di vitello』 Photo by scattidigusto.it
※胃 Trippa ミノ Rumine ハチノス Reticolo センマイ Omaso ギアラ Abomaso
好みのわかれるホルモンですが、イタリアでは、トマト煮の『Trippa di vitello alla romana』や『Trippa di vitello alla Fiorentina』、『Trippa col sugo all’aretina』など、他、セロリとレモンでマリネ風の冷製『Insalata di trippa』が主流です。(『Trippa alla napoletana』は、トマト煮とマリネ風と両方のレシピがあります。)また、フィレンツェ名物『Lampredotto alla Fiorentina』は、ギアラと野菜を煮込んで、グリーンソースを添え、そのまま、もしくはパンに挟んで食べる一皿です。
『Insalata di trippa』 Photo by blog.giallozafferano.it
さいごに
お腹半分~尻尾までの下半身部位、いかがでしたか?王道ヒレやサーロインは、もちろん文句なしにおいしいのですが、後ろ足の部位を使った、詰め物『RipienoまたはFarcita』や、ホルモンのサラダ『Insalata di trippa』は、あまり日本では見かけない、イタリアの家庭料理の一皿と言えるでしょう。また、レストランにより、個性を発揮する、変化の見られる楽しい一皿でもあるでしょう。
イタリアの肉料理に欠かせないハーブは、下味、煮込み、グリルとほとんどの肉料理に使用されています。常用ハーブは、ローズマリー、タイム、セージ、マジョラム、ローリエ、癖のある部位には、ジュニパーベリーの実、ミント、クローブ、シナモンスティックなども加わり、臭み取りと味に深みやアクセントをつけています。どんなハーブが使われているのか、想像しながら味わこともイタリア料理の醍醐味かもしれません。
この記事を書いた人
Jeera
2008年よりイタリア在住。ミラノ、サンタマルゲリータリグレ(リグーリア州)、カナゼイ=カナツェーイ(ドロミテ山脈、南チロル)の3都市より、イタリアの気になる楽しいおいしい情報をお伝えします♪
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