ミラノ日本人初!エノテカオーナー兼プロソムリエ吉田希世美さん

イタリアに魅せられイタリアで活躍する日本人に話を聞いてみよう!ミラノで日本人初となるエノテカのオーナー兼プロソムリエとして、『EnotecaWine(エノテカ・ワイン)』を経営されている吉田さんにお話を伺いました。

ガウディ好きのオリーブ少女から女性編集者へ

Q イタリアにお住まいになってもう18年、エノテカ(*)をオープンして6年経つとのことですが、どのような経緯でイタリアワインの道に進まれたのでしょうか? (*)エノテカとはワインの展示、試飲、販売店のこと

A 小さい頃から海外に憧れる気持ちの強い子供だったんですよね。小学生の時は、英語が話せるようになりたくて、毎朝早起きして英語のラジオ講座を聞いていました。インターナショナルな環境の学校に進んだんですが、ある時クラスメートが雑誌の「Olive」を見せてくれたんです。その世界観やリセ生活、フランスの小物などに衝撃を受け、高校時代はフランスが大々好きなオリーブ少女でした。また、バンドをやっていたのでイギリスもアメリカも好きでしたし、あとガウディに傾倒していた時期もあってスペインにも興味があり、大学の第二外国語はスペイン語でした。

お店で販売しているオリーブオイル Photo by Italiamo

Q 前職は女性誌の編集者だったとか

A オリーブの世界観に憧れる音楽もガウディも好きな自分の将来を考えたときに編集の道に進みたいと思ったんです。扶桑社の「CAZ(キャズ)」「Junie(ジュニー)」「ESSE(エッセ)」といった雑誌で新しくオープンしたお店やファッションページの編集を担当していました。めちゃくちゃ忙しかったですが、とても楽しかったです。

A 今のところイタリアが登場しませんが(笑)

Q ガウディが好きだったので、ある時スペインのバルセロナに旅行に行ったんです。経由地がフランスのパリだったのですが、飛行機の席で隣になった人が機内で何も食べない。不思議だなと思って話をするうちに、彼はパリ経由フィレンツェに向かう出版社のカメラマンで、フィレンツェに着くまでは何も食べないということがわかりました。到着して、まずすることが現地でのランチ。機上ではフィレンツェの素晴らしさを語り尽くしてくれました。同業者ということもあり日本で再開して、一緒にイタリア料理を食べたり、雑誌でイタリア特集をやったりするうちに、すっかりイタリアの虜になっていました。




このままイタリアに一度も住まないで死にたくない

A それでイタリアへ?

Q イタリア好きになったことで、編集者時代の夏と冬の長期休暇は全てイタリアへ、計11回渡航しました。編集の仕事は楽しかったのですが、このままイタリアに一度も住まないで死ぬのはどうかと思うようになりました。やらないで後悔するのと、やって後悔するのと、どちらかを考えたときに、やらないよりやろう、イタリアへ行こうと決めたんです。

Photo by Italiamo

A イタリアに来て何をされたんですか?

Q まずはイタリア語を話せるようになるために、フィレンツェの語学学校に4か月毎日通いました。現地生活にどっぷりつかるためにホームステイを選び、さらにお料理も好きで学びたかったのでお料理上手なおばあちゃまのご家庭で、毎日料理の写真をとって、レシピを聞いて。語学学校の後は日本に帰る予定だったのですが、何か資格をとったらすぐに仕事が見つかるかなと思い、ソムリエになると決めました。それでA.I.S.(Associazione Italiana Sommelier イタリア・ソムリエ協会)の学校のあったミラノに移って、1年間ソムリエの勉強をして無事合格したのが2003年ですね。

サルディニア州のジャム。めちゃくちゃ美味しいです  Photo by Italiamo

そのあとはとにかく人とのつながりに助けられて運が良かったです。2000年度の A.I.S. Miglior Sommelier(イタリアのソムリエNo. 1)になったことのあるFabio Scarpitti が友人で、彼のエノテカで毎週土曜日に友人同士でブラインドテイスティングをやっていたのですが、Fabio が品種からヴィンテージ(生産された年)から次々に当てていくんです。Fabio がどうやってワインを推測していくのかを見ていて、とても勉強になりました。




あるとき彼がソムリエをやっていた「Il Luogo di Aimo e Nadia」というレストランで人が足りないから一日だけ働かないか、という話があったんです。レストランでのソムリエ経験はありませんでしたが、まずはやってみようと。でも最初はワインではなく水のサービスのみだったんですが、その後プリモ・ソムリエで1998年度のA.I.S. Miglior Sommelier の Federico Graziani の下でワインもサービスするようになりました。

その後もレストラン「Osteria del Binari」ではメイン・ソムリエを、系列店「Dolce Vita」では 2005年度の A.I.S. Miglior Sommelier Luisito Perazzo のコミ・ソムリエ (*) として色々学びながら働くことができました。さらにリナシェンテデパート・ミラノ店にあったエノテカ「YN Vineria」、フランスワイン専門店「Comptoir de France Milano」など、ご縁に恵まれてソムリエとしての経験を積んできました。(*)見習いソムリエ

途中一度だけ家族の事情で日本に帰国したことがありますが、2011年の震災を機にまたイタリアに戻ることになりました。エノテカ「Excelsior Eat’s Milano」のエノテカ部門で店長をやっていたときは、2005年度の A.I.S. Miglior Sommelier Michele Garbuio がレストランのメートル (*) として働いていました。合計4人の Miglior Sommelier と働くことで、彼らから様々なことを吸収することができました。(*)給仕長




A ソムリエからオーナー・ソムリエにはどのように?

Q 同僚ソムリエでA.I.S.公式テイスター(現 ロンバルディア州 A.I.S. Degustatoreのヘッド)のSebastiano Baldinuがエノテカを立ち上げるにあたり共同経営者を探しているということで、一緒に「EnotecaWine」を経営することになったのが2014年です。

共同経営者のセバスティアーノさんと Photo by Italiamo

ロンバルディア州のワインガイドブック Viniplus di Lombardia  Photo by Italiamo

納得感を選択の基準に

A やりたい方に進むとドアが開ける印象ですが、選択の基準はどこにあるのでしょうか?

Q 私はものを決めるときに感覚で選んでしまう方です。自分の納得感と、なんか面白そうという感覚を大事にしています。

A やりたいことを追求しての快進撃ですが、ご苦労されたことは?

Q やはり独立するのは大変ですね、法律面、税金面など。また、イタリア人と日本人はコミュニケーション方法が違うので、親切で良かれと思ってやったことが通じなかったり、はっきり言わないと伝わらない国です。でも店を開けるのが夢だったから、これからはもっともっと繁盛させたいですね。

イタリア人のお客様にオススメワインの説明  Photo by Italiamo

イタリアワインの魅力

Aこれだけ複雑なイタリアのワインはどうやってマスターされたんですか?

Q 初めてソムリエになった時は、ワインバーに行っては話を聞き、全てメモを取りました。またワインの試飲会がミラノでよく開催されるので、参加しては生産者に質問攻めをします。生産者には必ずその土地土地のストーリーがあるのでとても参考になります。後、カテゴリー、品種など一つのテーマを決めてその中での比較を行うと、味の違いがわかりやすいです。




A イタリアワインの魅力とは?

Q イタリアワインの魅力は土着の品種にあると考えています。登録されているだけで545種類のぶどうがあり、そして一つ一つに合う郷土料理がある。それを見つけるのがイタリアワインの楽しさであり、面白さであり、イタリアという国を知ることにつながるんだと思います。もし複雑すぎてわからなかったら気軽にソムリエに聞いて、その土地のワインとその土地の料理を合わせると自分の好きな組み合わせが見つかるのではないでしょうか。

EnotecaWine外観。通常はワインを試飲する人で賑わっている Photo by Italiamo

約700種類あるというワイン Photo by Italiamo

オリーブオイル、パスタ、トマトソースなど、ワインに合うイタリア食材も豊富 Photo by Italiamo

ここまで来るのに努力も苦労もあったのでしょうが、それを全く感じないたくましさと運の良さを持ち合わせた希世美さんの今後の活躍が楽しみです。

  • 近くにお立ち寄りの際は是非寄ってみてください。試飲も可能でバーのようにワインを頂けます。
  • イタリア全州から700種類集めたワインリスト。日本から購入することも可能です。吉田さんと直接お話ししながらオススメワインを選び、ヤマト運輸で送付します(送料・関税別)。
  • 吉田希世美さんブログ ありがとう、ワイン
アクセス方法 エノテカワイン「EnotecaWine」

住所 Via Giuseppe Brentano (番地なし),  20121 Milano
メトロM1線Cairoli駅(ドゥオーモとお城の中間あたり)
電話番号 +39 0236514771
営業時間 月 15:00-20:30  火-土 10:00-20:30
12月は、毎日営業 10:00-20:30
※8月と12月の営業時間は変更する可能性がありますので事前にご確認ください
ホームページ https://www.facebook.com/EnotecaWine




 

ITALIAMO編集部

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