日本で初めてのイタリア語スピーチクラブが、2019年に発足。アメリカを拠点とするコミュニケーションとリーダーシップ教育の非営利団体である、トーストマスターズクラブのディストリクト76(日本)に所属するイタリア語・英語・日本語の3か国語クラブです。
クラブの発足のきっかけ、そしてその魅力とは?創設者の齊藤紀子さんに話を伺いました。
日本でイタリア語のスピーチクラブ?
イタリア語スピーチコンテストでのスピーチ場面(写真提供:齊藤紀子さん)
創設のきっかけは、日伊協会様が主催する2018年のイタリア語スピーチコンテストでの優勝です。
私はそもそも人前で話すことが極めて苦手でした。人前で話そうとすると極端に緊張してしまうのです。人前で話す訓練が必要だと、トーストマスターズに入会してスピーチの練習をしたり、劇団に加入し発声法などを学んでいました。
また、イタリア語を大学で専攻し、卒業後も語学を生かした職に就こうと商社で海外サプライヤーとの交渉を務めるのですが、会社は男尊女卑の企業風土が色濃く、ずいぶん息苦しい思いをしました。
仕事に辟易していた私は、今後のステップアップをと思い、イタリア語スピーチコンテストに参加する事を決めます。
初参加の2014年は3位、さらに次は上位を狙い2回目2016年に参加するも、結果は同じく3位。この時は前回以上に、原稿を読む練習を入念に行いましたし、観客の反応にも手応えを感じていたのでショックでした。
何が足りなかったのか。
自分自身に問いかけ、徹底的に分析をして臨んだ3回目の2018年、ついに念願の優勝を勝ち取ることができたのです。
その時、私が気がついたこと。
それは、誰かに勝つためにスピーチをするんじゃない、自分と向き合い、自分自身の弱さを克服して成長するためににスピーチするんだ、ということです。
イタリア語スピーチコンテストにて優勝(写真提供:齊藤紀子さん)
己と徹底的に向き合ったからこそ、勝ち得た優勝でした。
イタリア語スピーチコンテストでは、一度優勝したらその後は参加資格がなくなります。
今後はイタリアやイタリア語が好きな仲間と一緒に、イタリア語でのアウトプットのスキルを高め合うような「場」が作りたいと思いました。
そこで、2019年10月、トーストマスターズクラブ日本支部内にイタリア語のクラブLa Voceを立ち上げたのです。
「先生」はいない。みんなで学び合う場
例会時のアジェンダ。各人が持ち回りで役を担う(写真提供:齊藤紀子さん)
トーストマスターズクラブには「先生」はいません。会員同士がフラットな関係で、それぞれ役割を担います。
当クラブでは、
・スピーチ(持ち時間5〜7分)
・スピーチの論評(持ち時間約3分)
・即興スピーチ(持ち時間1〜2分)
・ワークショップ
を、基本的なプログラムとして運営しています。
スピーチをしてそれで終わり、ではないのです。
スピーチを受け止めて、そのスピーチの何が良かったのか、改善点はどこか。論評者はスピーチを聞き、分析の上、即興で話さなければいけません。
つまり、聴く側も受け身ではない、ということです。
そして、皆さんにお伝えしたいのは、このクラブでは『間違えても大丈夫』ということ。
仕事ではないので、スピーチやプレゼンテーションの練習の場として活用し、自分のスキルアップに繋げて欲しいと思っています。
ワークショップで使ったすごろく。この日は、古代ローマ皇帝になりきって即興スピーチをするというワークでした(写真提供:齊藤紀子さん)
お互いに知識やスキルを教え合い、助け合い、励まし合ってともに学ぶサークルです。
ただの語学サークルではない
毎回工夫をこらしたスピーチを披露するメンバーたち(写真提供:齊藤紀子さん)
イタリア語の勉強をするだけなら、語学学校に行けば良いと思われるかもしれません。
しかし、恐らく当クラブほど、アウトプットの場を設けているイタリア語学習の場はあるでしょうか?
語学学校でもスピーチをしているのを聞いたことがありますが、原稿を見ながらの棒読み。
これはスピーチじゃない、と。
スピーチとは、話し手と聴き手の対話でもあります。
また、声の出し方ひとつで同じ単語でも全く違う印象に聴こえます。
それらを一切無視して、話すことに私は違和感を感じました。
このクラブは、La Voce、イタリア語で「声」という意味の名前をつけていることからも想像できるように、声の使い方をしっかり学んでスピーチをします。
声に色があるってご存知ですか?
興味が湧いた方は、是非、一緒に学びましょう。
素晴らしい出会い
イタリア・トリノとのコラボレーションが実現(写真提供:齊藤紀子さん)
このクラブを発足して1年ほど経った去年の秋、ついに念願かなってイタリアのトーストマスターズクラブとコラボレーションすることができました。
トリノにある英語のスピーチクラブで、企業内のクラブのため、通常は外部の人間が参加することはNGなのですが、日本でのイタリア語スピーチクラブが珍しいと思ってくださったのか、それとも私の熱意に負けたのか、社内で話を通してくれて、日本・東京とイタリア・トリノのスピーチクラブのコラボレーションが実現したんです。
イタリア語を、語学学校の先生ではないネイティブのイタリア人の前で話す機会は、日本にいるとなかなかありません。
当クラブからも何名かスピーチしたり、ワークショップや即興スピーチに参加したりと、お互いに良い刺激となっています。
思い描いていたクラブになった?
トーストマスターズでのコンテストにて(写真提供:齊藤紀子さん)
発足当時に比べると、メンバーも増え、順調にクラブは運営されています。
毎回各々工夫を凝らしたスピーチに、イタリア語スピーカーも英語スピーカーもそれぞれ刺激を受けているようです。
今後は是非日本にいるイタリア人の方が加入し、ネイティブにイタリア語を聴いてもらう、という機会を作ることができれば、と思っています。
話して自己満足、ではなく、自分の話した内容がネイティブにどう伝わるか。
伝わらなかったのなら、何が良くなかったのか。とても良い訓練になりますよね。
そして、いつかこのクラブから、私が参加したイタリア語スピーチコンテストへ挑戦する人が出て欲しいと思っています。狙うのはもちろん優勝です!
さいごにメッセージをお願い致します。
オフラインの時は、例会後みんなで打ち上げ。ピザのお店が行きつけだそう(写真提供:齊藤紀子さん)
先生がいないからこそ、お互いの知恵と工夫を披露し、高め合う。
それが、La Voceです。
イタリア語学習に物足りなさを感じている方、アウトプットの機会を探している方、きっかけは人それぞれ。
ぜひ、我々La Voceと一緒にあなたのイタリア語の才能を開花させてみませんか?
一緒にイタリア語でお話ししましょう!
La Voce(ラ・ボーチェ)
(写真提供:齊藤紀子さん)
開催曜日:毎月第1、第3土曜日 9:15〜12:00
※第1土曜日は会場開催、第3土曜日はオンライン開催(zoom)。
こんな方におすすめ!
☑ ⾧年イタリア語を学んでいるけどアウトプットの機会を探している方
☑ イタリア語を学んでみたいけど使う場所がないという方
☑ イタリア語を生かして働きたいけど面接がパスできない方
☑ イタリア旅行が好きでイタリア語を学びたい、使いたいという方
☑ イタリア語検定や英検の二次面接に自信をもって臨みたい方
☑ 人前でも自信をもって話ができるようになりたい方
☑ 恥ずかしがりやだけど、仲間となら楽しくお話できそうかも、と思う方
☑ 感動的な物語を聞いたり、みずから話したりしてみたい方
・見学者随時募集中
・イタリア語レベル不問
見学希望の方はメールでご連絡下さい。
メール:ospite.lavocetmc@gmail.com
この記事を書いた人
YUKAKO
夫の転勤に伴い、ローマに1歳の娘を連れて渡伊。イタリア人の子ども好きで面倒見の良さに感激する。また、現地のイタリア料理教室にも通い、イタリア料理の奥深さに触れる。子育て中の母親の視点、また料理好きの視点で、イタリアの魅力をお届けできればと思います。
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