世界一幸せな人達を世界一美しい場所で。ウェディングフォトを中心に活躍するイタリア在住カメラマン・井手京子さん

イタリアに魅せられ、イタリアで活躍する日本人に話を聞いてみよう!第四回は、イタリア全国をとびまわり素敵なウェディング写真を撮り続ける井手京子さん。英語講師をしていたアメリカから、新天地イタリアへ、そして写真の仕事へと、興味の尽きないお話をお聞きしました。

ウェディングフォトの仕事とは?

Q ウェディングフォトの仕事をされていらっしゃいますが、具体的にどんなお仕事をされているのですか?

A イタリアで結婚式をされる方向けに、主にロケーション撮影と挙式の撮影をしています。ハネムーンの方が一番多いですが、ご結婚されてから数年後にまたドレスを着て撮影したいという方、海外旅行の記念にお二人での写真を撮りたいとご依頼くださる方などいらっしゃいます。

ロケーション撮影とは、観光名所で撮影することで、撮影場所に合うようにみなさん着るものの色合いなどとてもうまくコーディネートされていて、拝見するのはいつも楽しみです。前撮り、後撮り、と呼ばれる結婚式前または後の撮影の場合もあれば、フォトウェディングといって、ご結婚式は挙げられず、写真だけ残したいというお客様もいらっしゃいます。

挙式撮影は、イタリア人のお客様の式、日本からいらしたお客様の式、どちらも撮影しています。イタリア人の結婚式は、日本の結婚式とは違うやり方なので、最初は勝手がわからず戸惑いました。まず、イタリア人の結婚式は、教会式と役所で行う式と2つのパターンがあります。支度は新郎新婦それぞれの家で行い、教会か役所で結婚式を行った後、レストランなどに移動して食事をし、最後にケーキカット、という流れです。一方で、日本人のお客様のイタリアでのご結婚式は、お二人だけでの式もありますし、ご親族だけが参列される式もあります。イタリア人の結婚式よりもシンプルですが、どんなスタイルであっても、挙式はいいものです。

Photo by Kyoko Ide

Q 結婚式って人生において重要な日ですし、それを撮るカメラマンさんはすごい仕事だなと。

A 式を撮っていると私も感極まりますね。ご家族が号泣していたりすると私の方も感動して、撮りながら泣いていたりします。挙式の撮影は本当に責任重大です。なんといっても、やり直しがきかないですから! 指輪交換や誓いのキス、ライスシャワーなど、絶対に撮り逃してはいけない瞬間があるので、緊張します。

英語講師から、禅寺、イタリアへ

Q そもそもどうしてイタリアに来られたのですか?

A 元々は英語が大好きで、日本の大学で英語講師をしていました。やりがいのある仕事だったので、より専門的に学ぼうとハワイの大学院に行きました。卒業後ハワイで英語講師をしていたのですが、色々と人生に迷ってしまって(笑)。一度リセットしてみようと、仕事をやめ、カリフォルニアの禅寺のリトリート(短期滞在)に行くことにしたんです。

それで行ってみたらお寺の生活があまりに楽しくて、いくつかカリフォルニアのお寺を周りながら禅寺生活を続けていました。その後、今度はフランスに良い禅寺があると聞いて、フランスへ。フランス滞在中に、イタリア人の今の夫に出会いまして。

A それでイタリアに。

Q そう、それでその人と結婚することになって、イタリアに来ました。

Photo by Kyoko Ide

イタリアで出会った天職

Q イタリアに来られて、どうして写真のお仕事を?

A 最初は料理の仕事をしようとしたんです。お寺では座禅を組むだけではなく、畑仕事や掃除などもするのですが、私はキッチンで働くのが一番楽しかったんです。それで料理をやろうかなと。料理教室とケータリングを始めたのですが、鳴かず飛ばずで。宣伝で料理の写真を撮ろうと思って小さな一眼レフを買ってみたんです。そうしたら写真を撮ることが面白くて、楽しくて仕方なくなってしまって。そこからカメラにはまりました。

Q 料理からカメラに移っていったのですね。

A そうですね。アマチュア時代に、ドキュメンタリー写真の撮影の手法を知ったのですが、これが面白くて。知人に頼んで、小さな子供のいる家族の日常の1日を、その家族と一緒に過ごさせてもらいながら撮るということをして。この頃培った経験が私のベースにあります。今ウェディングを撮る時も、なるべく自然に、やらせじゃなくて本当に起こっていることを撮るようにと。

Photo by Kyoko Ide

Q 井手さんのお写真は、自然体な表情やポーズが魅力的で、特長だと思います。

A ありがとうございます。自然体で撮るのは、私にとって大事で。ウェディングフォトのお客様は、日本で前撮りや挙式の撮影もされていて撮影に慣れている方もいらっしゃいますが、ほとんどの方がプロのカメラマンに撮ってもらうのが初めてです。そういうお客様は、緊張されていることも多いので、まずはその緊張をほぐしてもらえるように心がけています。写真は、撮った時の気持ちも思い出すものだと思うので、後で見返した時に、あの時は楽しかったな~!と思ってほしい。

カメラマンという仕事が好きで好きでたまらない

Q ウェディングフォトを始めたきっかけは?

A ローマの日本人経営の美容室を通して、ウェディングフォトを撮影させていただいたのが最初のウェディングフォトの仕事です。その後、日本のフォトウェディング会社から仕事をもらえるようになりました。イタリアを越えて他の国での撮影など、この会社の仕事を通して初めて経験させてもらったことは数えきれず、また、撮影や編集についてなど多くのことを教えてもらいました。

Q お仕事に対しての想いなどはありますか?

A 幸せな人達を美しい場所で撮ることができる、ということがまずありがたいです。アマルフィやポジターノ、シチリアのタオルミーナ、ヴェネツィア。ヨーロッパの他の国では、スペインのバルセロナや、アルハンブラ宮殿、それからクロアチアのドブロブニクとか。

そして、いいと思える写真が撮れた時の満足感は何ものにも変えがたくて。また、写真を気に入ってもらえて、楽しい撮影だった、京子さんに頼んでよかった、と言っていただけるのは幸せです。撮影は、撮る側と撮られる側と一緒に作り上げるものなので、やりがいがありますし、直にフィードバックをもらえるのも嬉しいです。

Photo by Kyoko Ide

Q お客様との様々な出会いも面白そうですね。

A そうですね。撮影中、仲睦まじい姿を見るのはほのぼのしますし、撮影後も、編集しながらお二人の幸せそうな姿をずっと眺めるので、情が移ってしまいます。また、ネットを通じてずっと繋がっているお客様もいて、お子さんが生まれて子育てを頑張っている様子を見ることも。新しい家族を築いていかれる姿を見られるのは嬉しいものです。コロナ禍が始まった時には、以前のお客様から暖かいお気遣いのメッセージをいただくこともありました。

コロナ禍と、今後について

A コロナ禍による影響はありますか?

Q 日本からお客様が来られないわけですから、日本人のお客様のウェディングの仕事は全滅しまして。でも、新しい試みとして、ウェディング以外の場所でのイタリア人カップルを撮らせてもらうチャンスになりました。コロナウィルス対策もあり人の少ない自然の中で撮るという新しい経験になって、勉強になりました。あとは、Instagramを通じて、他の国で活動している日本人フォトグラファーの方々と繋がることができ、励みになりました。同業者って大事ですね。

Q コロナ禍が終わったら?

A まずは日本のお客様に戻ってきてほしいです。また、ずっと撮っていると、どうしても同じ手法になりがちなのですが、コロナ禍の間にイタリア人カップルを撮っていた時、新しいやり方を試して得るものがあったので、それを今後の仕事で活かしてみたいですね。イタリアや、ヨーロッパの他の国など、新しい場所での撮影も、機会があれば挑戦したいです。

 

井手京子氏 プロフィール

佐賀県佐賀市生まれ。津田塾大学国際関係学科、ハワイ大学大学院第二言語学修士課程卒。東京、ハワイの大学で英語講師ののち、カリフォルニア、フランスでの禅寺生活を経て、2010年よりイタリア在住。ローマを中心に、イタリア各地、ヨーロッパ各国でウェディングフォト 撮影を行なっている。

instagramアカウント: kyokoide
公式サイト: https://www.kyokoide.com

写真が好きで好きでたまらない気持ちをもって、お客様の気持ちに寄り添い、写真の世界で活躍されていく井手さん。どうもありがとうございました!

この記事を書いた人
Kaho

2013年よりローマで暮らし、絵画修復学校を卒業。修復家、古美術商アシスタント、デザイン関係、料理人などの仕事をする。好きな芸術家はミケランジェロとエゴン・シーレ。ジャズクラブが大好きで毎晩通いたい。心がちょっと豊かになるような記事を皆様に発信していきたいです。
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