魚介と野菜の冷製カッポンマーグロ リグーリア州で食べたいおすすめのおいしいもの

「カッポンマーグロ」何度も繰り返したくなるユニークなネーミングに興味をそそられませんか?カッポンマーグロは、魚介や野菜とイタリアンパセリのソースをミルフィーユ状に何層にも重ねたリグーリア州の伝統料理の一つです。

リグーリアの伝統料理

「カッポンマーグロ(Cappon magro)」はリグーリア州の伝統料理の一つ、魚介や野菜とイタリアンパセリのソースをミルフィーユ状に何層にも重ねた華やかな冷製料理。
イタリアンパセリの鮮やかなグリーン、白身のお魚、ビーツの赤で決めればまさにイタリアンカラー、食卓を彩る一皿です。そこに長いヒゲの有頭海老やオレンジの身が映える青紫の光沢が美しいムール貝、お花型にカットした茹で卵をデコレーションすればパーティメニューのメインディッシュにぴったり。イタリアンパセリのさわやかな苦みとビネガーのすっきりした酸味がお魚やらお野菜やらと融合して、誰もがほお~とうなずいてしまうことでしょう。

カッポンと呼ばれるわけ

ジェノバでは赤い魚のホウボウを「カッポン」と呼び、ホウボウの白身がフランスのチャポン(去勢した雄鶏)の肉に似ていたことから「チャポン」→「カッポン」という名前が生まれたようです。つまりこのカッポンの白身がカッポンマーグロに使われていたわけです。ちなみにイタリアのほぼ全ての地域ではホウボウのことをガッリネッラと呼び、シチリアでは魚のカッポンはイルカを指します。気を付けましょう!

ホウボウです。  Photo by Jeera

マーグロって?

「マーグロ」には複数の意味がありますが、このカッポンマーグロの場合は肉なしの料理という意味になります。現在、復活祭の前の四旬節(※1)やクリスマスイブ、公現祭エピファニア(Epifania)(※2)のお肉を食べない節制時期によく食べられる一皿です。

つまり、肉や卵黄、乳製品、動物性脂肪(バターやラード)以外の食事になり、パン、魚、野菜、マメ類、トウモロコシの粉から作られるポレンタがマーグロ料理に使用される主な食材です。

16世紀のジェノバのいくつかの貴族家庭についての記述本には、肉なしデーに開催されるパーティには欠かせない豪華な一皿であったと記載されています。肉なしデーにもできるだけお肉に類似したマーグロな食材をチョイスし、盛りだくさんのデコレーションで華やかさを演出していたのでしょう。

(※1)四旬節とは、イタリア語でクアレージマ(Quaresima)と言って、復活祭の46日前の水曜から復活祭前日までの期間のこと。
(※2)公現祭とは東方三博士がイエスの誕生を礼拝した日であり、イエスの顕現をお祝いする日のこと。
(※3)貴族とは、名誉や称号、特権を持つ他の社会階級と区別した社会階層に属するグループの地位のこと。ヨーロッパでは古代ローマ時代から、日本では古墳時代(大和時代)から続いており、商工業の発展や時代の変遷とともに薄れつつありますが、現在も顕著に残る局面もあります。イタリアの各地には貴族の住居として使用されていた宮殿があちこちに点在し観光名所になっていますね。

Photo by Jeera

またその美しい盛り付けは、バロック時代にはより洗練され、一つの確立したメニューとして位置づけられます。そう、音楽ならオペラが流行り出した頃からコレッリ、ヴィヴァルディ、バッハの時期、美術ならミケランジェロからカラバッジョやベラスケス、フェルメールの時期、複雑で誇張された強烈な装飾が好まれた時代ならではの料理なわけですね。

けれど、このホウボウを使った肉なし料理、カッポンマーグロは貴族の食べ物、と位置づける前に掘り起こされる面白いエピソードも語り継がれています。

カッポン・マーグロの当時のレシピの材料である ”乾燥したパン、ソラマメ、栗、油、ドライきのこ、タラ” から、ガレー船(写真)の船員の食べ物であったとか、使用される魚介、野菜がスープを取った後の残りモノであったという説から、貴族の食事の残り物をリサイクルした使用人の食べ物であったとか、そんな伝説が残っています。

ジェノバに侵略を試みたヴェネチア軍の隊長がジェノバの愛人に作らせたとか、ホウボウが大漁でリグーリアの海が真っ赤に染まったとか、後者二つは私の想像ですが、、それぞれの逸話にロマンを感じ想像が膨らみませんか?

オールがたくさん設置された人力で進むガレー船      Photo by Jeera

サラダの王様カッポンマーグロ

1863年に発行されたレシピ本La cuciniera genoveseにはこんな言葉が残されています。

ラビオリがスープの女王だとすれば
美しく包み込まれたカッポンマーグロは
サラダの王として君臨するだろう

Photo by Jeera

視覚と味覚で楽しむカッポンマーグロ、いろいろな魚介、野菜で、オリジナルのカッポンマーグロを作ってみませんか?特別な日に、パーティメニューの一皿にどうぞ。。

レシピはこちらです!

 

この記事を書いた人
Jeera
2008年よりイタリア在住。ミラノ、サンタマルゲリータリグレ(リグーリア州)、カナゼイ=カナツェーイ(ドロミテ山脈、南チロル)の3都市より、イタリアの気になる楽しいおいしい情報をお伝えします♪
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