リグーリア州の伝統パスタ料理の一つ、「パンソッティ アッラ サルサディノチ」を知っていますか?帽子のようなお腹のような、愛らしいフォルムが特徴の詰め物パスタで、濃厚な乳白色のクリーミーなクルミペーストをこれでもかと絡めていただきます。
リグーリアの伝統パスタ
「パンソッティ アッラ サルサディノチ(Pansotti Alla Salsa Di Noci)はリグーリア州の伝統パスタ料理の一つ、帽子のようなお腹のような、愛らしいフォルムが特徴の詰め物パスタ。
濃厚な乳白色のクリーミーなクルミペーストをこれでもかと絡めてパンソッティと一緒にほおばると、青菜のやわらかな苦みとクルミの香ばしい香りが合わさって最高です。
このソース、こってり系ですが、パンソッティのツルンとした最初の食感とのコンビネーションがやみつきになり、お箸(フォーク?)が止まらなくなる一皿。気が付くとびっくりする量を食べていることでしょう。
パンソッティって?
パンソッティとはラビオリの一種で、茹でた葉物野菜とチーズの詰め物を包み込んだ肉なしパスタです。サイズは直径2.5~5cmくらい。
Photo by Jeera
ラビオリは、地域によってさまざまな形、大きさがありますが、パスタ生地の中に肉や魚、野菜、チーズのベースで作られるフィリングで成形されたパスタの総称です。
では、エミリアロマーニャ州のカペッレッティやトルテッリーニとはどう違うのでしょうか?
パスタの成形方法はどれも同じ。大きな違いはスープで食べるかソースで食べるか。
パンソッティはソースで、カペッレッティとトルテッリーニはスープで食べます。
また、生地や詰め物も異なります。
パンソッティはパスタ生地に白ワインが入り、カペッレッティとトルテッリーニは卵で作ります。
詰め物は、パンソッティには野菜とチーズ、カペッレッティには肉と野菜、トルテッリーニには肉とチーズがベースになります。
パンソッティと呼ばれるわけ
リグーリア州の方言でパンサ(Pansa)、イタリア語でパンチャ(Pancia)は、お腹を意味します。
詰め物を挟んだ三角形のパスタ生地をくるっと丸めて、コロンとした丸みを帯びた形にするわけですが、その形をお腹に見立てたようです。
その歴史は約100年前に遡ります。1931年発行のレシピ本にリグーリア州ラパッロのサンマルティーノディノチェートの名産との記載があり、1961年のネルヴィのガストロノミーフェスティバルで公表されました。
当時のパンソッティのレシピでは、詰め物に使われる野菜は、ポルトフィーノの山(Monte di Portofino)で自生する5種類の野菜のミックスで作られていたそう。
現在採れる自生野菜の一部 Photo by Jeera
パンソッティは肉が入っていないため、復活祭の前の四旬節(※)によく食べられる一皿です。
(※)四旬節とは、イタリア語でクアレージマ(Quaresima)と言って、復活祭の46日前の水曜から復活祭前日までの期間、肉を食べない節制の時期のこと。
人類より長いノチ(クルミ)の歴史
パンソッティのソースに使われるクルミ。ヨーロッパには紀元前7世紀から5世紀に、中国やヒマラヤの山塊から、ペルシャ、ギリシャ、イタリア(ローマ帝国)へと渡って広まりました。現在のイタリアでは80%のクルミがカンパニア州で生産されています。
クルミの木自体は、人類が地上に現れる前からクルミに類似する植物の種が地層から発見されており、紀元前4世紀までに書かれた聖書やローマ帝国時代でも語られ、ポンペイ遺跡からも出土しているんです。ちなみに日本では縄文時代の遺跡から見つかっています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州、中国が主要生産国。日本では長野県が生産量日本一です。
どこで食べる?
リグーリア州のレストランでは、メニューに大抵載っています。また、スーパーやパスティフィチョ(生パスタ屋)にて購入することも可能です。
また、リグーリア州では毎年7-8月のバカンス時期、もしくは2-4月の四旬節期間にパンソッティ祭(Sagra dei Pansotti)が Mele, Bogliasco, Fontanegli, Ceranesi, Monte Santa Croce など、あちこちの街で開催されています。
とは言ってもなかなか足を運べないですよね。そんな場合は自分で作ってしまいましょう!レシピはこちら。
Photo by Jeera
既製品を買った場合の価格帯は、パンソッティ400g + クルミペースト150g、2-3人前でこんなイメージです。
- レストラン 10-15ユーロ/1人前
- スーパー 4-5ユーロ + 3-8ユーロ
- 生パスタ屋(機械) 8-10ユーロ + 4-8ユーロ
- 生パスタ屋(手作り) 16-18ユーロ + 4-8ユーロ
*買う地域によってかなり価格が変ります。
さいごに
リグーリア州で食べたいおすすめのおいしいもの「パンソッティ アッラ サルサディノチ」。
歴史的には浅いのですがクルミが大昔から食されていたことから、ジェノバ黄金期にはそれっぽいものはすでに存在していたかも!?海を渡る海賊たちも、リッチな商人たちも、ジェノバ生まれのコロンブスも、みんな実は似たようなモノを食べたていたのかな!?なんて思いを馳せながら味わいたいものです。
肉以外のメニューでお探しの方、ツルンと滑り青菜と交わるクルミペーストとのコンビネーション体験がまだという方に、、ぜひこの一皿をおすすめします。
この記事を書いた人
Jeera
2008年よりイタリア在住。ミラノ、サンタマルゲリータリグレ(リグーリア州)、カナゼイ=カナツェーイ(ドロミテ山脈、南チロル)の3都市より、イタリアの気になる楽しいおいしい情報をお伝えします♪
Jeeraの他の記事を読む