クリスマスの時期、12月になると、イタリアのケーキ屋、パン屋、バール、スーパーなどには、ふっくら膨らみ、丸みを帯びた、愛らしいフォルムの、クリスマス菓子"パネットーネ"があちこちに並びます。この時期ならではの、おいしいパネットーネの魅力をご紹介しましょう。
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大人も子供も大好きパネットーネ!
ボリューム感たっぷりのパネットーネ、イタリアのこの時期の手土産はみんなコレです。朝食に、食後のデザートに、おやつの時間に、なくなるまでビスケット感覚で食べられています。老若男女、みんな、ふわふわ、しっとりの食感と、フルーツとバターの混ざる甘い香りの虜です。
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パネットーネ伝説
パネットーネの起源は、はっきりしておらず、いくつかの伝説が語り継がれています。その1つは、15~16世紀にミラノを統治していた、ルドヴィコ スフォルツァ(イル モーロ)の宮廷料理人の雑用係トニが、キッチンで起こったトラブルを回避するために、残り物の酵母に果物の砂糖漬けやレーズン、卵を入れて作り、その甘いパンが、貴族たちに好評だったとか。そこから、トニのパン=『パン ディ トニ : Pane di Toni』⇒『パネットーネ : Panettone』と名付けられたそうです。
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もう一つの伝説はというと。。ミラノに住んでいた、鷹匠ウリヴォ デッリ アテッラーニが、パン屋の娘アルギザに恋をし、そのパン屋で働き始め、売り上げを伸ばそうと発明したのが、パネットーネの起源とか。。ちなみに、この二人は結婚して幸せに暮らしたそうです。。よかった!
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クリスマスに食べられる、この贅沢な甘いパン、パネットーネは、19世紀半ばまでは、パネットーネ専門のケーキ屋が、手作りで生産していましたが、その後、大手菓子メーカーより、機械にて大量生産されたパネットーネも、販売されるようになりました。
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そして現在は、パネットーネの腕を競う展示会が、毎年ミラノを中心に各地で催され、その年1番おいしいパネットーネが選出されます。この展示会では、パネットーネを試食し、購入することができるため、多くのミラネーゼで賑わいます。
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またバールやケーキ屋で、エスプレッソと一緒に一切れ注文できる場合もあります。
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材料と作られ方
本場パネットーネは、『パネットーネ クラッシコ : Panettone classico』または『パネットーネ トラディツィオナーレ : Panettone tradizionale』と呼ばれます。天然酵母と卵、バター、小麦粉、砂糖、レーズンや果物の砂糖漬けがベースで、とてもシンプルな材料で作られます。酵母を数回リフレッシュさせ、活発にさせてから、生地を作り、成形、発酵、焼成、と完成までには数日かかる、なんとも手の込んだお菓子なのです。また焼き菓子ですが、通常賞味期限は、大抵2週間程度です。
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いろんな味のパネットーネもおいしい!
前述の通り、果物の砂糖漬けが入るものがオーソドックスですが、チョコレートやピスタチオクリーム、マロングラッセやアプリコット、洋梨などなど、毎年、職人オリジナルのパネットーネがたくさん登場します。イタリア人は、クラシックなパネットーネと、新しい味のパネットーネ、毎年2種類以上揃えて楽しんでいるようです。
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サイズ
パネットーネのサイズは、直径22cm、高さ15cm、重さ1kg前後が定番です。パーティ用特大サイズで2~5kgや、小さめ500gなどを扱う店舗も稀にあります。この1kg、一見絶対食べきれないだろうと思うのですが、意外とスルスル食べられてしまうから不思議です。
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パッケージ
重さ1kgに耐えうるパッケージには、パネットーネがすっぽり収まる、四角い箱に取っ手ヒモがついたものが主流ですが、丸い円柱のものや、缶に入ったり、包装紙で包まれたもの、いろんなデザインがあり、気分を盛り上げてくれます。
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上級者はこう食べる!
パネットーネは、そのまま食べても十分おいしいのですが、イタリアの食いしん坊たちは、マスカルポーネや生クリーム、チョコクリームをたっぷりつけてしまう荒技を持っていますよ。
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酵母を使ったイタリア各地の伝統菓子
パネットーネと同じくらいイタリア全土に広がる、ベローナ生まれの"パンドーロ : Pandoro"も、クリスマス時期ならではの、酵母焼き菓子です。こちらは、パネットーネと生地は似ていますが、フルーツの砂糖漬けの入らない、シンプルなものです。パネットーネより高さがあり、輪切りにすると星型になるため、スライスして、クリームを挟み、交互に積みさね、粉砂糖をふりかければ、ツリーのようにセッティングできます。またスライスの間に、サラミやプロシュート、サラダ等を挟んで、軽食になることもあります。
パンドーロ Photo by Jeera
さて、クリスマス時期に出てくる、もう一つのミラノの酵母菓子"ヴェネツィアーナ : Veneziana"をご存知でしょうか。このヴェネツィアーナもフルーツの砂糖漬けが入り、パネットーネととてもよく似ていますが、サイズも甘さも控えめで、ブリオッシュに近い、パネットーネより軽めの焼き菓子です。こちらは、お正月に食べられるほうが多いようです。
ヴェネツィアーナ Photo by pinterest.it
酵母を使ったクリスマス時期の伝統菓子は、ミラノだけではありません。ベローナの"ナダリン : Nadalin"は、松の実やアーモンドの入ったもの、
シエナ生まれの"パンフォルテ ディ シエナ : Panforte di Siena"は、酵母なしで、はちみつが入ったもの、
ジェノバ生まれの"パンドルチェ : Pandolce"は、パネットーネとほぼ同じ材料で作られますが、よりパンに近い食感です。
右からナダリン、パンフォルテ ディ シエナ 、パンドルチェ Photo by Jeera
ヴァルテッリーナのモルベーニョ生まれ"ビショーラ : Bisciola"は、はちみつや胡桃、ヘーゼルナッツ、干しイチジク、松の実などが詰まった、よりリッチなもの、ちなみに、モルベーニョから30kmほどの至近にある街、ソンドリオの"パヌン : Panun"は、酵母なしです。
エミリアロマーニャ州ボローニャ生まれの"チェルトズィーノ ディボローニャ : Certosino di Bologna"(別名パン スペッツィアーレ : Pan speziale/パノーネ : Panone)は、八角などの中国スパイスが加わり、
南のラツィオ州生まれの"パンジャッロ : Pangiallo"は、生地よりも、ナッツやフルーツの砂糖漬けがたくさん入り、はちみつとサフランの隠し味が加わります。
右からビショーラ、チェルトズィーノ ディボローニャ、パンジャッロ Photo by Jeera
ちなみにイタリアは、クリスマスが過ぎても、1月6日公現祭Epifania(※)まで、祝日ムードが続きます。ベネト州、トレント州、フリウリ州には、この公現祭のためのお菓子、"ピンツァ ヴェネタ: Pinza veneta"という、干しイチジク、松の実などの他、フェンネルシードが加わった酵母焼き菓子があります。
(※)公現祭とは東方三博士がイエスの誕生を礼拝した日であり、イエスの顕現をお祝いする日のこと。
ピンツァ ヴェネタ Photo by blog.giallozafferano.it
さいごに
シンプルな材料を、活発な酵母で発酵させた、高技術を要するパネットーネ。日本でも、パネットーネ専門店や、イタリアの老舗店舗から直送されたものが手に入り、じわじわパネットーネブームがやってきていますね。今年は、是非イタリアのクリスマス菓子、パネットーネで素敵なクリスマスを!
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この記事を書いた人
Jeera
2008年よりイタリア在住。ミラノ、サンタマルゲリータリグレ(リグーリア州)、カナゼイ=カナツェーイ(ドロミテ山脈、南チロル)の3都市より、イタリアの気になる楽しいおいしい情報をお伝えします♪
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