イタリアではカプチーノは朝食に飲まれるもの、ランチや夕食後はエスプレッソや食後酒で〆るというのがお決まりです。そんな朝の定番カプチーノの柔らかな泡を生み出すミルク、その泡で作られるラテアートに最適な牛乳の選び方をご紹介します。
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カプチーノはバールでしか飲めない!?
そんなことはありません。朝食はバールで済ませることも多いイタリア人ですが、もちろん家でカプチーノを作る人もたくさんいます。バールのスチームで作られるカプチーノを、ビアレッティのムッカや、自動泡立てポット、ハンディタイプのミルクフローサーなどで手軽に再現しているわけです。
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泡を作るためのミルク、ラテアートに最適なミルクとは!?
カプチーノのためのミルクは、タンパク質3.2-3.5%、乳脂肪3.5-3.8%。脂質の少ないミルクでは、メレンゲのような泡になり、美しいラテアートもすぐに溶け、あっという間に消えてしまいます。コクのあるクリーミーで濃密な泡を保つには、タンパク質と乳脂肪の割合がカギになります。
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そしてこのタンパク質と乳脂肪の割合をクリアするのが、乳脂肪を抜き取っていないミルク、全乳です。全乳の場合は、イタリア語でインテーロ(intero)、無脂肪、低脂肪をスクレマート、パルツィアルメンテ スクレマート(Scremato/Parzialmente scremato)と表記されます。
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ヤギ、羊、水牛のミルクやヴィーガン用に豆乳という選択肢もありますが、 本場イタリアのバールでは、通常カプチーノといえば牛の全乳で作られたカプチーノが提供されます。イタリアの牛の全乳のタンパク質は3.2~3.6%、乳脂肪は3.5%以上、低脂肪牛乳は1.5~1.8%、無脂肪牛乳が0.5%未満です。
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全乳といってもいろんなタイプの全乳があるイタリア
イタリアのスーパーに並ぶ牛乳は、低温殺菌の冷蔵保存タイプと高温殺菌の常温保存タイプの大きく二つに分類され、全乳でも製造工程の違いで保存方法と保存期間が変わるため多様な選択が可能です。
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まずは低温殺菌、冷蔵保存タイプの全乳をご紹介しましょう。
ラッテ フレスコ パストリッザート(Latte fresco Pastorizzato)
搾乳から48時間以内に72~78度で15~20秒、低温殺菌されたミルク。冷蔵庫で殺菌日から最大6日間保存可能な一番ポピュラーなタイプです。全乳以外にも、無脂肪、低脂肪、乳糖なし等、好みや用途により幅広く選択できます。
ラッテ フレスコ パストリッザート ディ アルタ クオリタ(Latte fresco Pastorizzato di Alta qualità)
保存方法、期間は前者のラッテ フレスコ パストリッザートと同じですが、より低温かつ短時間の工程で低温殺菌され、ホエイプロテインを多く含む、風味と栄養素をより重視した全乳です。
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上記2種がオーソドックスなタイプですが、下記2種は冷蔵長期保存が可能な牛乳です。またこの2種も全乳だけでなく、無脂肪、低脂肪、乳糖なし等バリエーション豊富に揃います。
ラッテ フレスコ パストリッザート ミクロフィルトラート(Latte fresco Pastorizzato Microfiltrato)
低温殺菌後、特別な濾過プロセスにより脂肪分と99%以上の微生物を除去し、脂肪分を再度調整したミルク。味と栄養素をさほど損なわず、冷蔵庫で15日ほど保存できることがメリットですね。
ラッテ フレスコ パストリッザート ア テンペラトゥーラ エレバータ エ ESL(Latte fresco Pastorizzato a temperatura elevata e ESL)
低温殺菌、冷蔵保存タイプの中で一番高温の80~135度で殺菌され、一番短い時間(例えば1秒)で処理されたミルク。こちらはなんと冷蔵庫で25~30日間保存可能です。これは長い!
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さて、まだまだ続きますよ。ここからがより変わり種。栄養素、味は低温殺菌より劣ります が、高温殺菌し、長期常温保存できる牛乳です。もちろん全乳だけでなく、無脂肪、低脂肪、乳糖なし等のお好みのコンビネーション牛乳が存在します。
ラッテ ステレリッザート ア ルンガ コンセルバッツィオーネ(Latte sterilizzato a lunga conservazione)
少なくとも135度以上、且つ1秒以上の高温殺菌されたミルク。開封後は冷蔵庫で3~4日以内に消費する必要がありますが、常温にて最大3ヶ月保存可能です!
ラッテUHT(Latte UHT)
135~150度で1~5秒、水蒸気を利用した殺菌熱処理を施したミルク。開封後は前者と同じ消費法ですが、常温で6ヶ月保存可能です!!すごい!
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ようやく終わりが見えてきましたが、まだまだ選択肢はありますよ。
ラッテHD/センツァ ラットーズィオ(Latte HD (High Digestibility)/senza lattosio)
ミルク内に存在する消化しずらい乳糖を、特定の酵素プロセスによって単糖に分解し消化率をあげたミルクです。これもまた低温殺菌からUHT等それぞれ揃っています。
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そしてミルクの原料である生乳もカプチーノに。
ラッテ クルード(Latte Crudo)
生乳はイタリア語でラッテ クルード(Latte Crudo)、タンパク質3.5%、乳脂肪3.7%ですから、やはりカプチーノに適しています。ただ、搾乳したままの熱処理を一切していないミルクなので、消費前に沸騰する必要があり、3才未満の子供や免疫が低下している場合はNG、そして沸騰前は2日以内、沸騰後は4日以内に消費しなければなりません。
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ここまで読破したアナタもなかなかのカプチーノ好き、はもとより牛乳好きですね、そう、イタリア人も牛乳大好き。牛乳好きなら一度はチャレンジする生乳ですが、イタリアには自動販売機の生乳ディスペンサーが、各地に計1028台設置されており、いつでも搾りたての生乳を気軽に購入することができます。(自動販売機設置場所は milkmaps https://www.milkmaps.com/ をご覧ください)
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さいごに
イタリア人のミルク愛が伝わったところで、本題であるカプチーノに最適なミルクを割り出せましたか?
タンパク質と乳脂肪の割合で、泡の密度とミルク風味の絶妙なバランスを作り出すカプチーノ。イタリア人はどんな時にもミルクを欠かさず、自分好みのミルクを選び、自分好みのカプチーノを毎朝楽しんでいるのですね。そう、タンパク質3.2-3.5%、乳脂肪3.5-3.8%の黄金比ミルクで。。
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この記事を書いた人
Jeera
2008年よりイタリア在住。ミラノ、サンタマルゲリータリグレ(リグーリア州)、カナゼイ=カナツェーイ(ドロミテ山脈、南チロル)の3都市より、イタリアの気になる楽しいおいしい情報をお伝えします♪
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