毎日食べたいイタリアの生ハム その種類とは

イタリアの食を語る上で無視できない存在が、古代から保存食として愛されているハム類。主に豚肉から作られた塩漬け肉全般のことを、イタリアではサルーミ(Salumi)と呼び、色々な種類を盛り合わせて前菜として食べたり、パンの間にはさんでパニーニとして食べたり、またはピザに乗せたり料理に使ったりと、食生活の一部として大切な存在、その代表的なものをご紹介します。

プロシュット(Prosciutto)

最も有名なものがプロシュットまたはプロシュートで、大好きだという方も多いのではないでしょうか。イタリア語の「乾燥する」を意味する「Prosciugare」が語源で、プロシュット・クルードといって後ろに「生の/Crudo」をつけると、生ハムという意味になります。

プロシュットは豚のもも肉を塩漬けにして乾燥・熟成させて作られます。薄くスライスしてそのまま、もしくはメロンやイチジクと合わせたり、グリッシーニ(細長く硬いパンのようなもの)に巻き付けたりしていただきます。特に著名なのは、エミリア・ロマーニャ州パルマの生ハム(Prosciutto di Parma)とフリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州サン・ダニエレの生ハム(Prosciutto di San Danielle)で、原産地名称保護(PDO)に認定。地域、餌、熟成期間によって味も色も異なり、柔らかいフワッとした食感と熟成の旨味のコンビネーションは全て制覇したくなってしまいます!

パルマの生ハム三種類、熟成期間が全て異なる Photo by Italiamo

プロシュット・クルード(生ハム)が非加熱であるのに対し、プロシュット・コットという「火を通した/Cotto」ものもあり、こちらは75度で9時間から12時間ほど加熱処理されています。日本で昔から言うところのハムに一番近いですね。

Photo by Italiamo




スペック(Speck)

トレンティーノ= アルト・アディジェ州、南チロル地方のハム。ドイツ語が話されるオーストリアとの国境に近い地域なため、地中海地方で一般的な塩漬けという工程に加え、北ヨーロッパで一般的な燻製という工程が合わさって生まれたと考えられます。プロシュットと同じく豚のもも肉を塩とハーブで漬け込み、乾燥と燻製を繰り返したあと、最低22週間熟成されます。

手前がスペック Photo by Italiamo

トレンティーノ= アルト・アディジェ州はこんなところ
オーストリアに隣接したイタリア最北端、トレンティーノ・アルト・アディジェ州の州都 トレント
イタリアにあるドイツ語圏、南チロルの中心都市 ボルツァーノ

コッパ(Coppa)

コッパ、または、カポコッロと呼ばれるのは豚の首のお肉から作られる生ハム。イタリア語でカポとは頭のこと、コッロとは首のことを意味します。ワイン、ニンニクや地方によって異なるハーブやスパイスで味付けされてから、塩漬け、そしてマッサージされ、熟成されます。繊細な風味と、赤みと脂身のバランスが特徴です。

手前から二番目の丸めてあるもの、サイズが小さいので食べやすい Photo by Italiamo




パンチェッタ(Pancetta)

豚のお腹のばら肉を塩漬けし、20日から4ヶ月ほど乾燥、熟成を繰り返して作ります。ハーブをつける場合もあります。脂肪分が多く、旨味たっぷりなので、パスタソースや、スープのだしなどに使われることが多いですが、そのままの薄いスライスを食べることもあります。燻製させるものもあり、こちらはパンチェッタ・アッフミカータ(Pancetta affumicata)と呼ばれます。

Photo from Livitaly.com

右がわの白いものがスライス Photo by Italiamo

グアンチャーレ(Guanciale)

パンチェッタと似ているようで違うのがグアンチャーレ。豚の頰肉を、塩、胡椒、セージ、ローズマリー、ニンニクなどでつけ、最低三ヶ月乾燥、熟成させます。有名なレシピはパスタのカルボナーラソースやアマトリチアーナソースです(実際にはこちらのレシピにはパンチェッタもよく使われます)。

Photo from livitaly.com




サラミ(Salami)

豚のひき肉にラルド、塩などを混ぜて使った腸詰ソーセージのことで、日本でいうサラミと同義です。地域によって混ぜるものは異なり、スパイスを入れたり、トリュフを入れたり様々なものが楽しめます。特に南イタリアでは唐辛子を加えたピリ辛の Salami di piccante が有名です。また、カラブリア州バジリカータでは、ソプレッサータ(Soppressata)といって他の地域とは異なり、豚肉を全身使用して作られるサラミが作られています。

スーパーに並ぶサラミ Photo by Italiamo

左:  カポコッロピカンテ
中央: サラミ フェリーノはパルマのIGP(保護指定地域表示)
右:  サラミ ガルバネット

カットして提供されます Photo by Italiamo

モルタデッラ(Mortadella)

エミリア・ ロマーニャ州のボローニャの詰め物、豚のひき肉と喉の脂身をサイコロ型にしたものをまぜて作る、イタリア版ソーセージです。きれいなピンク色でほわっと柔らかい食感です。黒胡椒を入れるのが伝統的ですが、ピスタチオやオリーブが入っているものも多いです。

手前左がモルタデッラ Photo by Italiamo




ラルド(Lardo)

良質の大理石が取れるトスカーナ州カラーラ近くの分離集落コロンナータ。ここで作られる豚の背脂の塩漬けがラルドで、その起源は2000年以上前にさかのぼり、当時大理石加工に従事していたギリシャ人が考案、彼らのエネルギー源となっていたと言われています。豚の背脂に塩・こしょうと、ニンニク・ローズマリー・セージなどのハーブをすりこみ、コンカという大理石の入れ物の中で6か月以上寝かせて出来上がります。カットしてそのままハムのように、またはパンにのせたり、または食材にのせたり使ったりしていただきます。

合わせて読みたい 最高級大理石の産地カラーラの洞窟と名産品ラルド

ブレサオラ(Bresaola)

豚肉ではなく牛のモモ肉で作った生ハムで、18ヶ月から4年熟成されます。プロシュットと比べ、脂肪分が少なく赤身がかっており、旨味が強いです。ロンバルディア州ヴァルテッリーナ地方のものが有名です。そのままスライスして、パルミジャーノやルッコラを上にのせていただくのが人気のスタイルです。プロシュットに比べて食感は硬めで、なんとなくビーフジャーキーのような味わいです。

いかがでしたか?たくさんありすぎて選べないほど種類が豊富なイタリアのサルミ。見かけたらぜひトライしてみてくださいね。また、豚や牛に限らず、ジビエなどを使用して作られるものもたくさん。機会があったらご紹介したいと思います。

合わせて読みたい 高級食材を扱うEATALY トリノ本店を体験する

#郷土料理

ITALIAMO編集部

 

関連する記事

おすすめ記事

インタビュー トレンド
  1. 日本初の本格イタリア語スピーチクラブLa Voce創設 齊藤紀子さん

  2. ミステリーハンターのダヴィデさん 日本に恋したローマっ子

  3. 奥野義幸さんの成長の哲学 リストランテ・ラ・ブリアンツァ オーナーシェフ

  4. 世界一幸せな人達を世界一美しい場所で。ウェディングフォトを中心に活躍するイタリア在住カメラマン・井手京子さん

  5. ミラノ日本人初!エノテカオーナー兼プロソムリエ吉田希世美さん

  1. ガンベロロッソからSUSHIガイド!

  2. 大スターの予感 平均約21歳のロックバンドマネスキン

  3. 2021年 イタリアのベスト・ジェラーテリア ガンベロロッソ

  4. サンレモ音楽祭 2021 優勝曲は?

  5. イタリア 2020年ヒット曲