2022年1月29日、第13代イタリア大統領が決定!
新大統領はマッタレッラ現大統領が続投
2022年1月24日から始まった大統領選で、2月3日に7年の任期を満了し退任を表明していたセルジョ・マッタレッラ前大統領の続投が決まりました。
1941年生まれ、現在80歳のマッタレッラ氏はシチリア出身。1983年キリスト教民主党からイタリア下院選に出馬し初当選。’87年国会担当相、’89年教育相、’98年副首相、’99年国防相を歴任。2008年に政界を引退し、2011年に憲法裁判所裁判官となるものの、2015年1月大統領に選出されたという経歴の持ち主です。
高潔な人柄で知られ、弁護士になりパレルモ大学で教鞭をとっていましたが、、兄で1978年からシチリア州知事を務めていた兄のピエルサンティ・マッタレッラが、パレルモでシチリアンマフィアに殺されたことを機に、学究生活を捨てて政界入りを決意したそうです。
大統領と首相の違いって?
イタリアの大統領は国家元首であり、任期は7年。象徴的な存在という位置づけである一方、首相及び首相の助言に基づく閣僚の指名、議会の解散、軍隊の指揮、法案の再検討を求めるなどの権限を持っており、非常時に政治の暴走を食い止める重要な存在です。
国家元首とは:
君主制の国家では天皇・皇帝・国王などの君主、共和制の国家では大統領が元首とされることが通例である。社会主義国では大統領の他、中国の国家主席やかつてのキューバの国家評議会議長、ソ連の最高会議幹部会議長、東ドイツの国家評議会議長なども国家元首に該当する。(出所:Wikipedia)
一方の首相は、正式タイトルは「閣僚評議会議長」と言い、行政権を統括します。
混沌とした選挙戦
イタリア大統領は、1,009人からなる選挙人団(630人の国会議員と321人の上院議員、および58人の地方議員)により投票で選ばれます。イタリア国籍を持つ50歳以上の人なら誰でも参加できる大統領選ですが、正式な候補者リストがなく、かつ無記名投票で行われるため、結果の予測が難しいことで有名です。当選するためには、第1回から第3回までの投票では3分の2の多数を確保することが必要、第4回以降は過半数が必要です。
元欧州中央銀行総裁のドラギ現首相が有力候補とされていましたが、一方、彼の大統領就任は首相ポストの空席を意味します。このため、脆弱な連立政権が崩壊し解散総選挙のリスクがありますが、2019年の法改正と2020年の国民投票で次回の選挙から議員定数を約3分の2に削減することが決まっているイタリア。議員職を失うおそれがある議員にとっては、総選挙を回避したいとの思惑が働きやすい状況です。また、支持基盤の異なる連立政権をまとめる力のあるドラギ首相なくしては、数十億ユーロのEU復興資金を得るために必要な改革が頓挫する可能性があり、市場も成り行きを見守っていました。
選挙前の調査 出所:東洋経済
こうした政治的思惑から、選挙は混沌。退任を表明していたマッタレッラ氏の続投への機運が徐々に高まります。1月24〜29日まで合計8回の投票が行われ、最終的にマッタレッラ氏が退任の意思を撤回し、政治的危機を回避するために2度目の選出を受け入れたという結果になりました。獲得票数は759票。
キリナーレ宮殿
大統領のオフィスは、かつてローマ教皇やイタリア国王が住んでいた同名の丘に建つキリナーレ宮殿。1573年、ローマ教皇の夏の離宮として建設開始、グレゴリウス13世からピウス9世まで、約30人の教皇が住みました。フランス統治時代には、ナポレオンがローマの居城とするために改築を命じたものの、足を踏み入れることはなかったそうです。1870年から1946年の共和国宣言までイタリア王室が住み、その後、国家元首の住居となりました。
80歳のマッタレッラ大統領のご健康とご活躍をお祈りします。
ITALIAMO編集部