テルマエ・ロマエの世界が広がる ハドリアヌス帝の別荘ヴィッラ・アドリアーナ

ローマから30キロほど東にある街ティヴォリに、ヴィッラ・アドリアーナという世界遺産があります。古代ローマ皇帝ハドリアヌスが、20年の歳月をかけて建設した別荘地で、広大な敷地に様々な建物や神殿、浴場などが建てられ、現代でもそれらの遺跡を楽しむことができます。

※ヴィッラ・アドリアーナとは、イタリア語で『ハドリアヌス帝の別荘』という意味

ヴィッラ・アドリアーナとは

Photo by YUKAKO

ヴィッラ・アドリアーナは、古代ローマ皇帝ハドリアヌスが118〜133年にかけて、自身の保養地として、ローマ郊外であるティヴォリに建設した別荘地です。
エジプト、ギリシアに構想を得、それらの要素を盛り込んだ建物ができあがりました。しかしハドリアヌス帝の死後、その後の皇帝も別荘地を訪れましたが、次第に足は遠のき忘れさられてしまいます。やがて、蛮族が侵入し、破壊されてしまいました。
しかし、1999年、ユネスコの世界遺産に登録され、現在は修復作業が行われながら、観光地として再び注目される場所となったのです。

ヴィッラ・アドリアーナの全面積はなんと120ヘクタール!(ちなみに、東京ディズニーランド2つ分が約100ヘクタールです。どれだけ大きいかわかりますね)
現在見ることができるのは、約40ヘクタールですが、それでもかなりの大きさです。遺跡の中は、日差しを遮るものはないので、夏場に訪れるのであれば、日傘や帽子を持参しましょう。

ハドリアヌス帝について

それでは、この広大な別荘地を建設したハドリアヌス帝とはどのような人物だったのでしょうか?
ハドリアヌス帝は、ヤマザキマリさんの漫画『テルマエ・ロマエ』にも登場したキャラクターなので、ご存知の方も多いかもしれません。
ハドリアヌス帝はローマ帝国の全盛期、五賢帝の3番目の皇帝です。“旅する皇帝”と呼ばれるように彼は在位中、これまでの皇帝とは違い、無理な領土拡大をするのではなく、ローマ帝国の領土を視察して回り、帝国の平和的な国家運営に務めた人物として知られています。簡単にいうと、イケイケドンドンで戦争による領土拡大を目指していた時代の皇帝とは違い、各地方を周り地盤固めを行ったのです。彼の治世でローマは安定した平和の時代を送ることができました。

また、ギリシア、エジプト文化にも精通し、その影響がティヴォリに建設した別荘にも出ています。

ヴィッラアドリアーナ 見どころ

カノプス Canopo

Photo by Emphyrio on pixapay

カノプスとは、この細長い池のことを指し、池の周りには優美なアーチがそびえ、穏やかなハーモニーを生み出しています。
ハドリアヌス帝が視察で、特にお気に入りだったのが、エジプト。
一説にはハドリアヌス帝が愛した美少年、アントニヌスをエジプトのナイル川で亡くし、その彼を偲んで作られたとも言われています。

  Photo by YUKAKO

光が水面に反射し美しいですね!

海の劇場 Villa dell’Isola

Photo by YUKAKO

円柱の柱を並べその中心に島をつくり、池で囲みました。ハドリアヌス帝は、一人になりたい時はこの島を訪れ、島への橋を上げさせて自分だけの時間を楽しんでいたとも言われています。

小浴場と大浴場 Terme

Photo by YUKAKO

古代ローマといえばお風呂!
ハドリアヌス帝もお風呂が好きだったのか(?)、小浴場、大浴場を自身の別荘地にも建設しました。
小浴場は“冬の邸宅(palasso d’Inverno)”とも呼ばれ、大理石でできたとても豪華な建造物だったそうです。

Photo by YUKAKO

大浴場。その大きさは圧巻!

ポイキレ Pecile

Photo by YUKAKO

ギリシア語で“彩色回廊”と呼ばれた建物。中央には貯水池があります。
縦200メートルを超える貯水池を、あの時代に建設したというのだから、驚きの言葉以外ありません。

さいごに

Photo by lapping on pixapay

ローマの喧騒とは裏腹に、周囲の自然と調和し、のどかな雰囲気の別荘地であるヴィッラ・アドリアーナ。壮大な遺跡に囲まれ、古代ローマに思いを馳せてみるのはいかがでしょうか?

広大な敷地であるがゆえ、3密の心配はゼロ。むしろ広すぎるので、歩きやすい靴で訪れることをおススメします(ヒールは厳禁!)。

また、もし余裕があれば訪れる前にヤマザキマリさんの『テルマエ・ロマエ』を一読しておくと、ハドリアヌス帝の人となりを把握することができ、情景が目に浮かび、より一層楽しめるかもしれません!

アクセス方法

地下鉄B線でポンテ・マンモーロ(Ponte Mammolo)駅まで行き、そこからCo.Tral社バスでティヴォリ行きプレネスティーナ経由(Via Prenestina)またはアウトストラーダ経由(Via Autostada)のバスに乗る。ヴィッラ・アドリアーナ(Villa Adoriana)のバス停で降りて、そこから約400メートルほど坂道をあがり、案内板を右に曲がると入口がある。

次回 ティヴォリのもう一つの見どころ ヴィッラ・デステ

ティヴォリには、ヴィッラ・アドリアーナのほかにもう一つ有名な観光地、ヴィッラ・デステがあります。ヴィッラ・デステはイタリア語で『エステ家の別荘』という意味で、見事に整備された庭園が有名です!
ヴィッラ・エステの魅力は、こちらのリンクからどうぞ。

 

この記事を書いた人
YUKAKO
夫の転勤に伴い、ローマに1歳の娘を連れて渡伊。イタリア人の子ども好きで面倒見の良さに感激する。また、現地のイタリア料理教室にも通い、イタリア料理の奥深さに触れる。子育て中の母親の視点、また料理好きの視点で、イタリアの魅力をお届けできればと思います。
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