ヴァチカン市国があり、キリスト教の長い歴史のあるイタリア。日本ではクリスマスは単なるイベントと化していますが、そもそもクリスマスはキリスト教における重要な宗教行事です。イタリアではクリスマスはどのように過ごし、祝うのでしょうか?
クリスマスってイヴと25日だけじゃないの?
日本ではクリスマスというと24日と25日のみお祝いしますよね。イタリアでは、期間がもっと長いのです。
クリスマスの期間というと、まず12月8日から始まります。この日は聖母受胎の日といって、聖母マリアがイエスを身ごもった日。この日から街はクリスマス一色、ショーウィンドーにはクリスマス関連の商品が並び、スーパーにはクリスマスの食べ物を売り始め、街中に大きなツリーやイルミネーションが飾られます。また人々もクリスマスに向けてうきうきした気分になってきて、プレゼントを買いに街に出ます。
次に、24日。クリスマスイブですね。夕食に魚料理が並びますが、まだクリスマス本番ではなく、それほど重要な日ではないのだそう。
そして25日。待ちに待ったクリスマス。イタリア語でクリスマスはナターレといい、降誕日、キリストの誕生を祝う日です。家族親族が家に集まり、昼食・夕食と、豪華な食事をします。プレゼント交換を楽しんだりも。
それから26日は、聖ステファノの日で、家族と過ごしてもいいですが友人達と出かけることも。
年が明けて、1月6日がエピファニア、公現祭、です。東方の三博士が、幼児イエスの所に来て礼拝したという日です。また、この日はイタリアの魔女のべファーナが、良い子にしていた子供にプレゼントをしてくれるという日でもあります。1月6日をもってクリスマス期間は終わり、冬休みが終わって人々は日常に戻っていきます。
準備はツリーだけじゃない?
イタリアのクリスマスの準備というと、まず日本と同様クリスマスツリーがあり、それからプレゼピオとアドベントカレンダーです。
ツリーは日本と同じようなもので、木に飾りつけをします。
それからプレゼピオですが、これはキリスト誕生の瞬間を表現した模型のこと。シルバニアファミリーのようなサイズの人物や動物、建物や街の様子がかたどられています。家庭によって、人物の数や、建物の規模(馬小屋だけだったり、街が築かれていたり)、様式や素材も様々。この時期にカトリック教会に行くと、教会が持っている部屋いっぱいの大きなプレゼピオを見ることもできます。
プレゼピオ
そしてアドベントカレンダー。12月1日からクリスマス本番まで、毎日小さな窓や小袋を開けてお菓子やメッセージカードを一日ずつ楽しむものですね。クリスマスの時期になるとスーパーには主にチョコレートメーカーが販売するカレンダーが売り出され、家族などに贈るために買う人も多いようです。手作りする人もいます。
プレゼントやクリスマスカードは?
プレゼントは25日に開けます。恋人や家族だけでなく、友人や知人にちょっとした気持ちとして渡すことも少なくありません。日本でいうお歳暮のようなものでもあるわけですが、プレゼントですので、お歳暮によく入れる食べ物ではなく、雑貨や衣類などの物を渡します。そして、かわいい紙やリボンで丁寧に包装するのも重要。お店で包装してもらうか、包装紙を買ってきて自分でやる人もいます。
そしてプレゼントには、基本的にカードをつけます。クリスマスの時期に近づくと、書店などでのクリスマスカードの販売に力が入るため、様々なおしゃれなカードを買うことができます。ブオン・ナターレ(英語でいうメリークリスマス)だけでなく、フェリーチェ・アンノ・ヌオーヴォという、よい新年をお迎えくださいにあたる言葉も一緒に書かれているカードもよく見ます。クリスマスと共に年末のご挨拶といった所ですね。
クリスマスには何を食べる
最後に、クリスマスの食べ物について。
まずはお菓子。パネットーネ、パンドーロといった柔らかい菓子パンのようなお菓子の他、トッローネというヌガー菓子も代表的なものです。
そして食事。長いクリスマス期間において、一番大事なのは25日であり、この日はとにかく昼と夜と長い時間をかけてたくさんの量を食べます。テーブルセットも普段より華やかに、いつもは使わないとっておきの食器やテーブルクロスを出して、ナプキンもクリスマス用のものを買い足したり。
食事はというと、前菜、パスタ、お肉などのメインディッシュ、サラダやチーズ、デザートとフルコースの料理が続いていきます。イタリアのマンマの腕のみせどころです。昼食と夕食の間には、買い溜めておいたり人からもらって溜まっているパネットーネなどを開けてつまみつつ、プレゼントの話に花が開き、談笑し……。一年で一番幸せな時間をおいしい食事と家族と共に過ごす、これがイタリアのクリスマスです。
いかがでしたでしょうか?イタリアではクリスマスはこのように過ごします。キリスト教の本場のクリスマスをイメージできたでしょうか?それでは皆様、ブオン・ナターレ!
この記事を書いた人
Kaho
2013年よりローマで暮らし、絵画修復学校を卒業。修復家、古美術商アシスタント、デザイン関係、料理人などの仕事をする。好きな芸術家はミケランジェロとエゴン・シーレ。ジャズクラブが大好きで毎晩通いたい。心がちょっと豊かになるような記事を皆様に発信していきたいです。
Kahoの他の記事を読む