イタリアの新聞事情とは

インターネットの普及により、発行部数が大幅に減少している新聞。それでもまだまだ社会事情を知るには欠かせないツールです。イタリア好きのためのイタリアの新聞事情とは?

イタリア社会における新聞の位置づけ

日本新聞協会が発表した 2020年の日本の1日あたりの新聞発行部数は約3509万部。人口は約1億2千万人ですので、約3.4人に1人の割合。

ではイタリアではどうでしょうか?

全国紙・地方紙合わせた約60紙の合計は約230万部(※)。人口は日本の半分の約6千万人ですが、26人に1人の計算になります。日本と比べるとずいぶん少ないですね。

(※)出所:Accertamenti Diffusione Stampa、2020年末現在 1日あたりの平均発行部数

Photo by Flipboard on Unsplash

Media Landscapeの分析によれば、イタリアのメディアの中心となるのはテレビ。イタリアの新聞は、元々政治や社会情勢に詳しいエリート層をターゲット読者としていること、ゴシップ記事が少ないこと、を理由とし、社会全体に大きく浸透するには至らないまま。

また、収益性の低さから運営には援助が必要なため、報道機関を利用して独自の経済的利益を追求する企業や起業家に支えられている面があります。




最も読まれる新聞は?

イタリアでもっとも読まれる新聞を見てみると、イタリアらしさが垣間見えます。ここには6つご紹介していますが、一般紙 3つ、経済誌 1つ、の他に、キリスト教紙 1つ、スポーツ紙 1つ、という顔ぶれとなりました。そしてもちろん、このほかに数多くの地方紙が存在するわけですね。

ではみてみましょう!その新聞の立場を知ることで、ニュースの解釈の仕方も変わってくるかもしれません。また、最後に英語で読める媒体もご紹介しています。

Corriere della Sera(コリエーレ・デラ・セラ)

Photo by RCS Mediagroup

最大の発行部数を誇る「Corriere Della Sera」は、1876年に創設された歴史ある新聞社。「コリエーレの歴史(La Storia del Corriere)」によれば、道徳の首都を目指すミラノのブルジョワ階級を創刊時の読者とし、今でもリベラルな立場をとっています。1925年から1943年までの約20年間、ファシストに屈し、ムッソリーニ政権の代弁者となったこともありました。

  • 設立        1876年
  • 発行部数  26.2万部
  • 本社      ミラノ
  • 運営   RCS Mediagroup Spa

La Repubblica(ラ・レプブリカ)

コロナ禍における初回ロックダウンを知らせるニュース

La Repubblica」は、1976年にローマを拠点に創設。比較的新興ながらコリエーレ・デラ・セーラに次ぐ発行部数です。創刊時より左派進歩主義をとる立場でしたが、近年では中道よりのスタンスに変化しています。

  • 設立        1976年
  • 発行部数  17.5万部
  • 本社      ローマ
  • 運営      GEDI Gruppo Editoriale S.p.A.




Il Sole 24 Ore(イル・ソーレ・24・オーレ)

Il Sole と 24 Ore という二紙が合併して現在の形となる   Photo by ilsore24ore.com

イタリア産業連盟の Confederazione Generale dell’Industria Italiana が保有する「Il Sole 24 Ore」は、経済紙。日本に例えるならば、経団連が運営する日本経済新聞といったところでしょうか。リベラル寄り。

  • 設立        1865年
  • 発行部数  14.6万部
  • 本社      ミラノ
  • 運営      Il Sore 24 Ora Spa

Avvenire(アヴェニーレ)

Avvenireのスタッフに面会するフランシスコローマ教皇 Photo by Vatican News

Avvenire」はイタリアカソリック教会とつながりを持ち、ヴァチカンカウンセルと信者との媒体としての役割を果たしています。キリスト教左派。

  • 設立        1968年
  • 発行部数  11.8万部
  • 本社      ミラノ
  • 運営      Avvenire Nuoca Editoriale Spa




La Stampa(ラ・スタンパ)

1925年の新聞 Photo from Mole24

トリノに本社を置く「La Stampa」は、1867年創設の歴史ある新聞社。社会自由主義。イタリアだけでなくヨーロッパ諸国からもアクセスがあるメディアといわれています。以前はフィアットがオーナーでしたが、現在はラ・レパブリカと同じく、多国籍メディア会社 GEDI の傘下です。

  • 設立        1867年
  • 発行部数  11.5万部
  • 本社      トリノ
  • 運営      GEDI News Network Spa

La Gazzetta Sport(ラ・ガゼッタ・スポルト)

 羽生選手も登場

第6位の発行部数となるのは、スポーツ紙の「La Gazzetta Sport」。毎年5月にイタリア全土を舞台にして行われる歴史的な自転車プロロードレース「ジロ・ディ・イタリア(Giro d’Italia)」を主催しています。ピンク色の紙面が特徴で、ジロ・ディ・イタリアの大会カラーがピンク色なのもそのため。スポーツ報道の中でも特にサッカーの比重が高くなっています。

  • 設立        1896年
  • 発行部数  9.8万部
  • 本社      ミラノ
  • 運営      RCS Mediagroup Spa

合わせて読みたい 世界自転車三大レースの一つ ジロ・ディ・イタリアとは?




番外 英語でアクセス可能な媒体

イタリア語を外国人ができるようになるには、学校に行くとか、家族を持つとか、イタリア語だけの環境で仕事をするとか、それなりの環境が必要。そんな環境ではない方のために、英語でも読める媒体もあります。

ANSA
Agenzia Nazionale Stampa Associata というイタリアの通信社で、非営利の協同組合。イタリア国内のほか世界77か国に海外支局をもつ。1945年設立。「ANSA.English」にて英語を読める。

The Local
スウェーデンの会社が運営するエクスパット向けの媒体「The Local」。イタリアだけでなくヨーロッパ複数の国で展開しており、旬のニュースだけでなく、エクスパットが欲しい情報などについても詳しく記載されています。

まとめ

いかがでしたか。

キリスト教、スポーツ、そしてここには紹介しきれない数多くの地方紙、と、まさにイタリアらしさが現れる新聞事情でした。

#ニュース

ITLIAMO編集部

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