「カフェ・ソスペーゾ」という習慣をご存知ですか?「保留されたコーヒー」という意味のナポリ発祥のこの習慣。コロナ禍の2020年再注目されていたんです。
カフェ・ソスペーゾとは?
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カフェ・ソスペーゾとは、「保留されたコーヒー」という意味の、第二次世界大戦下のナポリで生まれた習慣です。
バールなどで、お会計の際に2杯分のコーヒーの代金を支払います。
1杯分は自分用に、そしてもう1杯分は、後からやってくる「誰か」のために。その「保留」されたコーヒー代は、金銭的に支払えない人のコーヒーとなります。
素晴らしい習慣
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この習慣で、素敵だなと思うのは、きっと戦後のナポリで、この見ず知らずの人のためにカフェ代を支払っていた人も、そんなに裕福ではなかったのではないかな、ということ。それでも、そのコーヒー代を支払えない人のために、少しだけでも、と差し出すこの優しさ。
「保留された」コーヒーを飲むその「誰か」は、コーヒーを恵んでもらえた以上に、優しさ、思いやりを感じてコーヒーを、味わっていたのではないでしょうか。
戦後、豊かではなかった時代だからこそ、生まれた習慣とも言えます。
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広がる「カフェ・ソスペーゾ」
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戦中のナポリで生まれたこの素敵な習慣は、今やナポリに留まらず、イタリア全土、ヨーロッパやアメリカの一部の地域にまで広がっています。
2000年に入り、スターバックスをはじめ、様々なコーヒーショップで、カフェ・ソスペーゾの習慣を取り戻そうという動きが出てきています。
様々な「ソスペーゾ」
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今や、カフェ・ソスペーゾは、コーヒー以外にも様々な形で広がりを見せています。
例えば、一部のピッツェリアでは、1枚多く支払う「ピッツァ・ソスペーゾ」。また、パン屋では「パーネ・ソスペーゾ」、ジェラテリアでは「ジェラート・ソスペーゾ」などです。
多く支払った分のピザやパン、ジェラートは、生活困窮者に配布されるそうです。
また、食べ物だけにとどまらず、本のソスペーゾ「リブロ・ソスペーゾ」も、若者を中心に注目を集めました。
コロナ禍で広がった「スペーザ・ソスペーゾ」
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非常にイタリアらしい、優しさと思いやりに満ちたこの習慣。2020年のコロナ禍で、コーヒー以外にも広がりを見せました。
2020年、イタリアでは新型コロナウィルスの拡大で、非常に厳しいロックダウンの処置がとられましたね。この緊急事態で貧困者を支援する無料食堂の営業停止や、飲食店の閉店で、生活困窮者が、食事を手にする機会がさらに減ったのです。
そんな状況下で生まれたのが、「スペーザ・ソスペーゾ(買い物の保留)」。
この活動は、活動に参加しているスーパーで買い物をし、会計が済んだ商品を、専用の箱の中に入れる、というものです。
食品をはじめ、歯ブラシやティッシュなど生活用品も寄付の対象となっています。
また、別の団体では、市場を開きそこで団体に加入している農家から、募金や寄付で農産物を購入し、新型コロナウィルスで困っている人のために、届けるという活動をしていました。
さいごに
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ナポリで生まれた小さな、でも素晴らしい習慣が、何十年も経て、イタリアだけにとどまらず、国境を越え広がったこと。そして、コロナ禍において、人々の助け合いに繋がったこと。
イタリアって、本当に素敵な国だ、改めてそう思いませんか?
この記事を書いた人
YUKAKO
夫の転勤に伴い、ローマに1歳の娘を連れて渡伊。イタリア人の子ども好きで面倒見の良さに感激する。また、現地のイタリア料理教室にも通い、イタリア料理の奥深さに触れる。子育て中の母親の視点、また料理好きの視点で、イタリアの魅力をお届けできればと思います。
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