多くのイタリア人にとっての日常、コーヒー。コーヒーなしの日常はありえない。その習慣はどこから?
イタリアでコーヒーを飲むということ
朝起きたら一杯、移動先で一杯、ランチの後に一杯、休憩中に一杯、とイタリア人の日常にとって欠かせないのがコーヒー。イタリア語で Caffé(カフェ)といえばエスプレッソのことであり、Bar(バール、夜はアルコールも出す)のカウンターで一気飲み、もしくは席についてのんびりと、そしてバリスタや友人との世間話を咲かせる、というのがイタリア流コーヒーの楽しみ方。イタリア人の同僚や友人に「Caffé?」と誘われたら、それは「少し一緒の時間を過ごさない?」ということを意味します。
カウンターで立ち話 Photo by Italiamo
日本にも進出している Princi ミラノ店 Photo by Italiamo
コーヒー文化はどこから
エチオピアに自生していたコーヒー豆が、やがてイスラム世界に広まり、17世紀前半に地中海貿易において主要な役割を果たしていたベネチアの商人を介してヨーロッパに広まりました。そして、現存するヨーロッパ最古のカフェであるベネチアのカフェ・フローリアン(1720年オープン)や、ローマのアンティコ・カフェ・グレコ(1760年オープン)などが、今のイタリアのコーヒー文化の基礎を作り上げました。当時のカフェはサロン的で人との交流の場であり、多くの著名人が訪れて政治や芸術について議論を交わし、文化の発展に大きな役割を果たしました。
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1800年初頭には、ナポレオンの大陸封鎖令がしかれたため、砂糖やコーヒー価格が不足し値段が高騰していました。コーヒーの質を下げるよりも、量を少なくして質を維持するという施策をカフェ・グレコの3代目サルヴィオーニがとったことから、サイズの小さいデミタスカップが普及したとされています。また、1900年初めにはイタリアでエスプレッソマシーンが発明され(Espresso は早いを意味する)、数秒でコーヒーが抽出できるようになりました。
一方、イタリアの家庭ではモカと呼ばれるコーヒーを飲むのが一般的で、マキネッタと呼ばれる直火式エスプレッソマシン下部に水と挽いたコーヒーを入れて火にかければ、数分で上部にコーヒーが抽出されます。
Bialetti のマキネッタとカップ Photo by Italiamo
カフェソスペーゾという習慣
イタリアの中でも特に濃厚なエスプレッソが提供されるナポリで、第二次世界大戦中にカフェソスペーゾという習慣が生まれました。1杯のカフェを注文する人が2杯分の代金を支払い、あとで来るコーヒー代を払えない貧しい人のために、もう1杯のカフェをとって(ソスペーゾ=保留)おくのです。1杯のカフェに込められた思いやりです。
Netflix の Coffee for all という番組でこの習慣について見ることができます。
あなたはどのカフェ?
イタリア語が堪能でない限り、コーヒーの種類を知らないのに欲しいものを頼むのは至難の技。ここではコーヒーの種類をいくつかご紹介します。
カフェ(Caffé): エスプレッソのこと。砂糖をドバッと入れて飲むイタリア人が多いです。およそ1ユーロと庶民的な価格です。
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カフェマッキャート(Caffé Macchiato): 少々のフォームドミルクにエスプレッソを加えたもの。エスプレッソ用のカップ デミタスカップで飲みます。
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カプチーノ(Cappuccino): エスプレッソに約3倍量のフォームドミルクを加えたもの。日本でおなじみのサイズのコーヒーカップで飲みます。お好みでチョコレートパウダーやシナモンパウダーをかけてくれます。なお、イタリアではカプチーノは朝にだけ飲むものとされています。
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ラテマッキャート(Latte Macchiato):たっぷりのフォームドミルクにエスプレッソを加えます。
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カフェシャケラート(Caffé Shekerato):エスプレッソ、砂糖、氷をシェーカーで混ぜるコールドドリンク。こちらは砂糖の代わりに Baileys Irish Cream の入ったアルコールバージョン
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その他にもエスプレッソにグラッパを入れるカフェコレット(Caffé Corretto alla grappa)など、百人百様でオーダー可能です!
飲み物以上の意味を持つイタリアのコーヒー。スターバックスのような空間を提供するスタイルも良いですが、カウンターでクイッっと一杯して立ち話というのもクセになる習慣です。
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ITALIAMO編集部