イタリアでおいしい牛肉を食べるには ~部位別メニュー①~

イタリアでおいしい牛肉を食べるためには、まずどんなイタリアのブランド牛が存在し、イタリアの肉屋でカットされるそれぞれの牛肉の部位や、その料理法を把握する必要があると思いませんか?イタリアの牛肉事情をご紹介しましょう。

 

レストランのメニュー選びに戸惑わずに楽しめるようになったら、その土地の食材を自分の好みに調理することができるようになったら、よりイタリアをエンジョイできるのではないでしょうか。

牛肉の各部位を使用したメニューをご紹介しましょう。

Photo by spacciocarniceladina.it

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それぞれの部位を使ったイタリアンメニュー

イタリアの牛のブランドと部位が分かったところで、それら各部位が、イタリアではどんな方法で調理されているのか、またレストランではどうメニュー表記されているのか、気になります。それぞれの部位の定番メニューを探ってみましょう。

Photo by Jeera

1. タン Lingua

日本ではスライスされて販売されることの多いタンですが、イタリアでは塊で店頭に並びます。塊を1時間ほど野菜やハーブと茹でた後にカットし、グリーンソースで食べる『Lingua di vitello in salsa verde』、野菜と一緒に煮込む『Lingua di vitello arrosto con verdure』が一般的です。またヴェネト州の伝統料理には、塩と硝酸カリウムとハーブでもみ込み、茹でて仕上げる『Lingua salmistrata』があります。

『Lingua di vitello in salsa verde』 Photo by cortilia.it

2. ホホ Guancia

日本でも煮込み料理になることの多いホホ肉は、イタリアでも同じく長時間煮る料理が一般的です。赤ワインと野菜で煮込む『Brasato di guancia di manzo』、白ワインと乾燥ポルチーニで煮込む『Guancia di vitello al vino bianco e porcini』、どちらも マッシュポテトやポレンタを添えた一皿です。

『Brasato di guancia di manzo』 Photo by aleonlykitchen.blogspot.com

3. ネック Collo / Rosciale / Sapura

サイコロ状にカットし、野菜とトマトと赤ワインで長時間煮込む『Stufato di manzo al vino rosso』やグリーンピースとみじん切りにした野菜、トマトペースト、白ワインで煮込む『Spezzatino con piselli』、ビールで煮込む『Collo di vitello brasato alla birra scura』、焼き目をつけた後にコニャックと白ワインで煮込む『Arrosto di collo di vitello』、そのほか茹で肉『Bollito』、ミンチにして団子状にした『Polpette』やミートソース『Ragù』に利用されます。

『Collo di vitello brasato alla birra scura』 Photo by migusto.migros.ch




4. 肩ロース Reale / Spuntatura / Braciole

適度に脂質があり、カットされているもの、すでに塊でヒモで縛られているものとあります。塊の表面を焼いた後、ブランデーで煮る『Arrosto di reale』、同じく塊の表面を焼いた後、オーブン焼きにする『Arrosto di reale al forno 』、スライスレモンで覆った塊をオーブン焼きにし、ヘーゼルナッツソースを添える『Arrosto di reale al forno con salsa alle nocciole』と、焼き目をつけて煮込む調理が基本ですが、塊の表面を焼き、カットするのみのシンプルな『Tagliata di reale』でも楽しめます。

『Arrosto di reale』 Photo by ricette.donnamoderna.com

5. 肩ロース Biancostato di reale / Spuntatura / Spezzato / Braciole

平なフォルムの この部位は、骨とサシの入った部位で、ハーブでマリネし、グリルでこんがり焼いた後にスライスされた『Tagliata di Biancostato di reale』や茹で肉『Bollito』にソースでアレンジして味わいます。

『Tagliata di Biancostato di reale』 Photo by lacucinaitaliana.it

6. リブロース Costa della croce (reale) / Fracosta / Sottospalla

肋骨リブを含むサシの入りやすい脂質のある部位で、茹で肉『Bollito』、煮込み『Brasato di manzo』、骨を取り除いて塊にし焼き目をつけて煮込む『Arrosto di manzo』、パイ生地で包む『Fracosta di manzo in crosta』が主流です。

『Fracosta di manzo in crosta』 Photo by sfizioso.it




7. 中バラ Biancostato della croce

肋骨リブを含む平なフォルムで、比較的脂質の多い部位で煮込み料理が一般的です。野菜でシンプルに煮込み、ミルクソースを添えた『Biancostato di manzo con salsa al latte』、ストラッキーノチーズとミルクのソースを添えた『Biancostato delicato con crema bianca』、茹で肉『Bollito』、煮込み『Brasato』などがあります。

『Biancostato di manzo con salsa al latte』 Photo by salepepe.it

8. 肩バラ(ブリスケ)  Punta di petto / Petto grosso / Petto / Bruschetto

イタリアでは過小評価されがちな部位で、ここも脂質の多い部分です。野菜とトマトペーストと赤ワインで長時間煮込む『 Punta di petto di manzo brasata』や、フライパンでグリルした後、ミックスハーブとジャガイモを追加し、オーブン焼きで仕上げる『Punta di vitello al forno con patate』、塊に切り込みを入れポケット状にし、詰め物をした『Punta di petto farcita』の他、茹で肉『Bollito』や出汁『Brodo』にも使われます。

『Punta di petto farcita』 Photo by blog.giallozafferano.it

9. 肩バラ(ブリスケ) Fiocco / Petto grosso / Punta di petto / Zoia / Petto

8の部位同様脂質の多い部位で、煮込み料理が一般的です。野菜と白ワインで煮込む『Arrosto morto』や、鍋で長時間煮込む『Fiocco di manzo in casseruola』、茹で肉『Bollito』や出汁『Brodo』にも利用されます。

『Fiocco di manzo in casseruola』 Photo by sergiomariateutonico.it




10. 肩 Fusello / Sbordone / Polpa di spalla / Rollino / Girello di spalla

脂質の少ない部位ですが、煮込み料理に利用されます。レモンとタイム、白ワインで煮込む『Fusello di vitello in forno al profumo di limone』、フレッシュミックスハーブを巻き込み白ワインで煮込む『Fusello di vitello farcito』、また茹で肉『Bollito』にも活用されます。

『Fusello di vitello in forno al profumo di limone』 Photo by ricette.donnamoderna.com

11. 肩 Cappello del prete / Popa di spalla / Spalla / Copertina di spalla

筋肉質なこの部位は、やはり煮込み系が主流。牛乳と胡桃で煮込む『Cappello del prete di vitello con le noci』、野菜と赤もしくは白ワインでオーブン焼きにする『Arrosto di vitello al forno』、ハンガリー伝統料理ですが、パプリカパウダーの入ったトマト煮『Gulash』としてもレストランメニューで見かけます。茹で肉『Bollito』や出汁『Brodo』にも使用されます。

『Cappello del prete di vitello con le noci』 Photo by pastamamma.it

12. 肩 Fesone di spalla / Fesone / Polpa di spalla / Cotennotto

脂質の入るこの部位は、グリルから煮込みまで万能な部位です。スライスし小麦粉をまぶしてソテーにし、ワイン、ブロード、レモン汁で短時間煮る『Scaloppine al limone』、トマトソースで煮る『Carne alla pizzaiola』、肉巻き『Involtini di manzo』やパン粉をつけてバターで焼く『Cotoletta alla milanese』、生のまま薄くスライスした『Carpaccio di manzo』、ミンチにしたハンバーグ『Hamburger di fesone di spalla』、塊の煮込み『Brasati di manzo』や『Stracotto di manzo』などレシピのバリエーションが豊富です。

『Scaloppine al limone』 Photo by ilgiornaledelcibo.it




13. 肩 Brione / Pulcio / Polpa di spalla / Gamboncello

脂質が多めで、薄い膜で覆われています。塊で煮込む『Brasati di manzo』や、サイコロ状にカットして煮込む『Spezzatino di manzo』が主流ですが、茹で肉『Bollito』やミンチにしてミートソース『Ragù 』にも使用されます。

『Spezzatino di manzo』 Photo by buttalapasta.it

14. スネ Geretto anteriore / Muscolo anteriore / Ossobuco

前足のふくらはぎとスジ、骨髄を多く含むこの部位は、輪切りのもの、骨を抜いたものとあります。煮込みに向いているので、茹で肉『Bollito』や煮込み『Brasati di manzo』、『Spezzatino di manzo』、骨ごと煮込んで出汁『Brodo』が一般的な調理法です。ミラノ郷土料理『Ossobuco alla Milanese』は、この部位の輪切りを煮込んだ冬の定番です。また、ハンガリー伝統料理のパプリカパウダーの入ったトマト煮『Gulash』も人気です。("Stinco"と表記する場合もあります。)

『Ossobuco alla Milanese』 Photo by piccolericette.net

さいごに

タンからお腹半分までの上半身部位、いかがでしたか?肩の部位は、日本の焼き肉屋のメニュー並みに細かく分かれるので、それぞれの特徴を利き酒のように比較してみるのも面白そうです。

イタリアのスーパーでは、1~2kgの大きな塊、サイコロ状、もしくはぶつ切り、ミンチ、ステーキ使用の厚さのスライスというパックがメインです。特定部位の切れ端を集めた、切り落とし肉やコマ切れ肉のようにカットされたものは見かけません。しゃぶしゃぶやすき焼きに使うような、薄くスライスされたカットも、一部のお肉屋さんでお願いすると用意してくれる程度です。

イタリアの家庭料理には、このイタリアンカット肉がベストなわけで、それぞれの部位とカットをうまく活かした、おいしいイタリア料理を堪能したり、調理してみたいですね。

#郷土料理

 

この記事を書いた人
Jeera
2008年よりイタリア在住。ミラノ、サンタマルゲリータリグレ(リグーリア州)、カナゼイ=カナツェーイ(ドロミテ山脈、南チロル)の3都市より、イタリアの気になる楽しいおいしい情報をお伝えします♪
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