2020 ミラノファッションウィーク ブルネロ・クチネリにみる企業のあり方と地方創生

高級カシミアで有名なブルネロ・クチネリ。着心地の良いシックなデザインの製品を生み出す背景には、人間への尊厳を大事にする理念が根付いていました。

2020 ミラノファッションウィーク 展示会スナップショット

ブルネロ・クチネリ(Brunello Cucinelli)はカシミヤを主力商品とするイタリアのラグジュアリーブランド。シックでエレガント、着心地の良い美しい製品を提供して欧米の富裕層を中心に支持されています。2020年ミラノファッションウィーク中に開催されたブルネロ・クチネリの展示会にお邪魔してきましたので、そのスナップショットをご紹介します。

 大きな中庭のあるショールーム入り口

立ち話をするブルネロ・クチネリ氏

 モダンとクラシックが融合したインテリア   うっとりする新作の数々

今年はモデルさん達もマスク姿で

来場者にふるまわれたのは Bollinger のシャンパン

人間主義的資本主義とは

ブルネロ氏は労働者の尊厳を損なわない仕事の形を求め、実践してきました。田舎の農家に生まれ、都会の工場に働きに出る父を見て育ったクチネリ氏は、ある日上長からの侮辱を理由とする、強い父が流す涙を見て「人間の価値を大切にする仕事」を強く願うようになったといいます。安価な他国の労働力を求めず自国の職人技を守り育成し、相場より2割高い報酬を払うことで従業員に尊厳を与えています。

人間主義的資本主義についての私の考え https://www.brunellocucinelli.com/ja/humanistic-capitalism.html

ゆっくりでロマンチックなソロメオ村復興『A Project for Beauty』

そんなブルネロ氏が長い間かけて取り組んだのが奥様の出身地でブルネロ・クチネリ本社のあるソロメオ村の復興です。

フィレンツェから車で2時間ほど行ったところにあるウンブリア州ソロメオ村。1985年の本社移転や自社工場整備とともに始まった村の復興では、荒れていた古城や協会の修復、劇場や図書館などアートフォーラムの建設、ソロメオ職人学校の設立が実施されます。さらに2014年には、村に面した谷側の地に「産業」「スポーツ」「農業」のそれぞれををテーマとする3つの公園を造営することが発表され、2018年に完成しました。延べ33年の取り組みです。

その完成式典でのブルネロ氏の言葉を引用します。

わたしがいつも夢見ていたのは、人としての道徳的尊厳と経済的尊厳を保持しながら働くことでした。念頭にあったのは、地球に害を与えないものづくりをし、正当な利潤と倫理、尊厳、道徳をもって正当な利潤をあげることです。そのためにも、人々が美しい環境で働き、少しばかりよい報酬を手にし、自らもその夢の共同責任者として尊敬されていると感じる必要があります。

ご存知のように、郊外の劣化が世界中で問題になっています。しかし、それらの地区が居心地の良い場所になる可能性は大いにあると思うのです。私は、そうした場所から、素晴らしい市民性・人間性、精神性の再生が始まると信じています。ソロメオでは目的を達成することができたと感じています。

私たちの村で成し得たこと、それはとても素晴らしいことだと私には思えます。しかしそれは何も特別なことではなく、イタリア、ヨーロッパ、あるいは世界中の似たような状況でも試せるはずだと確信しています。

 

ライター
ITALIAMO編集部

 

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