イタリアの伝統的なクリスマス飾り「プレゼーピオ」

イタリアで伝統的なクリスマスの飾り付けといえば、「プレゼーピオ」。プレゼーピオはイタリアのクリスマスに欠かせない飾り付けです。

プレゼーピオとは

プレゼーピオ(プレゼーペともいう)は、キリスト降誕の様子を表した人形や模型のことで、イタリアではクリスマスツリー同様にクリスマスの飾り付けとして普及しています。聖母マリアを祝う12月8日の「インマコラータ・コンチェツィオーネ(聖母の無原罪の御やどり)」にクリスマスの飾り付けをするというのが一般的。この日を境に、プレゼーピオは、家庭や教会などで目にするようになります。聖母マリアと聖ヨセフ(イタリア語では聖ジュゼッペ)、幼子イエス・キリストだけの小規模なプレゼーピオから、東方の三賢者や羊飼い、動物などたくさんの人形が置かれる大規模なものまで種類は様々。イタリアの信仰深い家庭では、クリスマスツリーよりプレゼーピオの飾り付けに力を入れます。プレゼーピオはイタリアのクリスマスに欠かせないものなのです。

飾り付け途中のプレゼーピオ。人形以外は全てイタリアパパの手作り。どこにどの人形を置くか悩みながら飾りつけをしていました。

プレゼーピオの起源

プレゼーピオの誕生には、アッシジの聖フランチェスコが深く関係しています。1220年に聖フランチェスコは聖地巡礼をし、イエス・キリストの生誕地であるベツレヘムを訪れます。ベツレヘムに感銘を受けた聖フランチェスコは、その後、1223年にラツィオ州リエーティ県のグレッチョという小さな町で、キリスト降誕の場面を再現することにしました。町の近くの洞窟に、牛とロバをつれていき、干し草と飼い葉桶を置き、クリスマスにベツレヘムの洞窟を再現したといわれています。この再現では、聖母マリアや聖ヨセフ、幼子イエス・キリストはいなかったようです。聖フランチェスコによるキリスト降誕の再現は、まだ完全な形で表現されていないものの、歴史上初めてのプレゼーピオであったとされています。

プレゼーピオの主な登場人物

プレゼーピオの登場人物は、飾り付けの方法や規模によって異なりますが、どんなプレゼーピオでも欠かせないのは、聖母マリアと聖ヨセフ、幼子イエス・キリストです。イエス・キリストは12月24日までは配置されず、日付が25日に変わった瞬間にゆりかごのような飼い葉桶に置かれます。伝統的なプレゼーピオでは、飼い葉桶の近くには牛とロバ、小屋や洞窟の上には星が置かれます。その他には、羊飼いや羊、天使なども登場します。東方の三賢人は、エピファニア(1月6日)の前夜に配置されます。エピファニアは、東方の三賢人が幼子イエス・キリストを礼拝しに訪れたことを記念する祝日です。

12月24日までの空の飼い葉桶(上)と、クリスマス当日以降の幼子イエス・キリストがいる飼い葉桶(下)。

プレゼーピオの楽しみ方は人それぞれ

プレゼーピオで有名な町といえば、ナポリ。ナポリでは、豊富な種類の人形市があったり、工房で職人さんが作っているところを見ることができたりもします。職人のつくるプレゼーピオはとても精巧で芸術の域。また、イタリア人の中には、プレゼーピオを作るのが趣味という人もいて、職人でなくてもプレゼーピオを自作して楽しむ人が多くいます。クリスマス時期になると、自宅や教会にプレゼーピオを飾るだけでなく、プレゼーピオの展示会なども行われますので、イタリア各地、いろいろなところでプレゼーピオを楽しむことができます。その他、プレゼーピオ・ヴィヴェンテ(presepio vivente)というものも存在します。プレゼーピオ・ヴィヴェンテとは、人形でなく、本物の人間たちがキリスト降誕の様子を再現しているものです。このプレゼーピオ・ヴィヴェンテは、プーリア州やシチリア州で盛んに行われていますが、他の地域の都市でも行われています。

 

パパお手製のプレゼーピオでは、部屋やランプの明かりの配線も自作です。

正面からあまり見えない建物の中にも、パパ自作のこだわり家具が。ご実家にあった家具を再現したと自慢気に語ってくれました。ベッドのシーツや枕はマンマに裁縫をお願いしたそう。

近所でやっていたプレゼーピオ展で発見した興味深いプレゼーピオたち。背景にヴェローナのアレーナや海が見える作品。故郷の町をプレゼーピオで表現したそう。職人ではなく、趣味で作っている人たちの作品とは思えないくらいハイクオリティ。

時間が経つと昼から夜に変わる演出のプレゼーピオ。夜の場面になると左上に天使が現れます。

人形や模型ではないですが、クリスマスツリーの前に飾られていた立看板のようなプレゼーピオ。

この記事を書いた人
MAYUKO
初めての海外旅行で訪れたのはイタリア。そこからどんどんイタリアにのめり込み、大学院在学中にイタリア留学を決意。大学院での研究テーマはジュゼッペ・ヴェルディ。一度は日本へ帰国・就職するも、イタリアへの想いが忘れられず、2019年に再びイタリアへ戻ることを決意。現在ミラノ郊外在住。
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