コロナに負けないイタリアの懐深さ

ヨーロッパ随一のCOVID19のエピセンターとして多くの涙を流したイタリア。苦しみを受け止め、乗り越える、そこにイタリアの懐の深さを感じます。

突然起こったロックダウン

2020年3月8日、それは突然起こりました。ミラノのあるロンバルディア州が封鎖(ロックダウン)されることになったのです。

それまでも不穏な雰囲気はありました。2月20日イタリア初のコロナ感染が、ロンバルディア州郊外に住む中国渡航歴のない38歳のイタリア人男性に見つかり(後日の研究で、これよりずっと以前に感染は拡がっていたことが推測されている)その周辺の街はしばらくの間封鎖されていたし、ミラノの街も自粛ムードで夜は静まりかえっていました。

3月8日の夕方頃から「どうやら封鎖されるらしい」というSNSが拡散され、離れて住む家族のもとへ避難する人、買い溜めをする人、何も気づかずに普通に過ごしている人、それぞれがそれぞれの日曜の夜を過ごした後、深夜12時をまわった頃にコンテ首相から正式にロンバルディア州封鎖のお達しが出ます。そして翌々日にはイタリア全土が外出禁止となります。厳しいルールのひかれた全国封鎖にもかかわらず、毎日増え続ける新規感染者と死者の数。鳴り響く救急車のサイレン。街を覆う驚きと悲しみ。

苦しみを受け止めユーモアに変える力強さ

そんな中、人々の間で始まったのが歌うこと。

毎日夕方になるとベランダで歌を歌い、互いを励ましあいます。

ユーモアのあるやりとりもS N Sで行われ、家族・友人の間でロックダウンお笑いネタが飛び交います。

クゥアランティーン4日目、、、何かがおかしい。鏡に映る自分と乾杯!

*クアランティーンとは、ペストが猛威をふるった14世紀のイタリアで、入港した船が沖で40日間係留したことに由来する「隔離」「検疫」などの意味。イタリア語で40はクアランタ。

ロックダウン中にテニスの練習ができない二人の少女が、隣のアパートの屋上どうしでとテニスの練習をする様子はSNSで拡散され、後に少女等が大ファンであるフェデラー選手との対面を果たします。

空軍が5日間かけて全国21都市の上空を飛び、国民に勇気を与えます。

 

現在のイタリア

厳しいロックダウンのおかげで、3月に爆発した感染は現在は小康状態。8月のバカンスシーズンを迎え、一時期よりは感染者の数は増えつつも、以前のような医療崩壊には至っていません。皆が室内でのマスク着用義務とソーシャルディスタンスを厳密に守って生活し、また駅など混雑する場所では、通路が定められ人と人が交差しないよう管理されています。

定番(?)のあご下とイタリア風(?)に腕にマスクをつけて歩くイタリア人男女。室内でのマスク着用が義務づけられているため、誰もがマスクを持参する。ミラノドゥオモ聖堂前にて2020年9月撮影。

ロックダウンに反抗してデモを起こすでもなく、フェークニュースと騒ぐでもなく、ひどい人種差別を行うでもなく、悲しみを受け止め希望に変えていく。自由なラテン気質の国民性にもかかわらず、ルールを守り他人を思いやる行動。長い歴史を持つ地で、多様な民族が人生を交差する、そんなイタリアを感じる毎日です。

ライター
ITALIAMO編集部

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